Poke-mon

□流星☆ハニー
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《S》







私の好みに煎れられた紅茶
腹の底から感じる満足感に脳みそが常温で蕩けそうな感覚

安らぐ……言葉としてはそれが一番適当な気がする


ほっと一息ついてからそういえば星を見るのが目的だったかと思い立ったように空を見上げる




なんてことない夜空、だった
昔は

夜など隠密行動を隠すのに最適位にしか思っていなかった。それだけで十分だった

だってこの世界は不完全だから


だからアカギ様がこの世界を変えることを信じて私はひたすら彼についていった

人は感情があるが故に不完全だ。憎しみや悲しみに心を支配されて無用な争いを続け、やがてこの世界を食い尽くす

だからあの人は変えようとした。感情のない世界へと


悲しみを
憎しみを
怒りを
妬みを

争いを引き起こす全ての感情をなくす為に


私はそんなあの人に心底陶酔していた。あの人のやることに間違いなどないと信じていた


きっとあの頃の私は世界に蔓延るその感情だけしか知らなかったのだ
だからそう思えた





…今は?



そこまで考えて私は隣で空になった弁当箱を片付けている育て屋を見た



彼はよく笑う
彼の笑顔を見ていると不思議とこちらも悪い気持ちではなくなってくる

…嫌いではない笑顔だ


そんな彼がある時言ったのだ
「一番高いところで星が見たい」と


私は「星など見ても面白いものか」と言った

すると彼は信じられないといった表情で返したのだ


「君はここ以外での星を見たことがないのかい?」と


空などどれも同じだと思ったが彼は断固違うと言った。俺はジム巡りであちこち旅したし色んな場所に行ったけれどシンオウの空が一番綺麗だと思ったんだ、と


彼にそう言われてムキになった訳ではないが先月ホウエンに行く用事があり、その時初めて夜空を見た



そこには見慣れていたはずの空はなかった





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