Poke-mon

□流星☆ハニー
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《S》

「嬉しい……のか?」

「そうだね、少なくとも今は幸せだと思っているかな」


あの夜私は君と出会った

命令を遂行する者、それを阻止する者として

それを運命という言葉でくくりつければひどく薄っぺらいものに感じられる

運命などというものは突き詰めれば偶然に偶然が重なり続けた結果だ
ひとつが違えばたちまち成り立たなくなるかもしれない不確かなもの、枝分かれした未来のひとつの形


それだけのこと

それだけのことなのに


ふと考えてしまった
もし今アカギ様の望んだ世界に為っていたとしたら、と


怒りも悲しみも憎しみも妬みも、争いを起こすそんな感情は全て消える
……ならば喜びは?あれだって感情のひとつだ

それがなくなったらもう彼は笑わない。今のように「一緒にいられて嬉しいと」と言ってくれることもない

今当たり前に彼と過ごしている日常は消えるに違いない
それはあの人が無駄だと切り捨てた感情に満ち溢れたものだから


そう考えて身体の奥がぞっと寒くなるのを感じる


そんなの、嫌だ
今ははっきり言える


失いたくない。この時間を 世界を


「…サターン?」

「結果論だな」

「え?」

「だが同意せざるをえない」

「えぇ?」



全ては結果論だ
結果としてアカギ様の望んだ世界はならず、今も変わらぬ不完全な世界で私達は生きている。今なら嫌だと思えるがなっていたらなっていたできっと私は幸せだったのかもしれない
何故なら同時に彼へ今抱く感情すらないものとなっていたのだから


そして今私はアカギ様を失ったかわりに育て屋…レイジとの時間を手に入れた

それがよかったことだと思うこともひとつの結果としてのそれだ


「だがこの程度で幸せなどという言葉は安易に使うべきではないと思うがな」

「そういうものかな」

「幸せとは常に追い求めるものだ。幸せだと言って歩みを止めれば後はただ腐っていくのみだ」

「……成る程、その発想はなかった」






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