少女

□叶いそうにもありません
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ある時ザンザスがいなくなってから私はずっと部屋の隅にただ、存在してるだけだった。
呼び掛けたって返事はしなかったし、部屋の前に定期的に置かれた食事だって口をつけなかった。


優しさ、に触れたくなかった。

ヴァリアーのみんなは酷く、時に残酷なほど優しくて本当に…辛かった。


皆の優しさを棄てて、私は日に日に痩せて衰えていって…

ただその部屋に存在するだけになった。


皆は別々に部屋に来て、心配そうにご飯を勧める。
冷えないように毛布をかけてくれる。
流れ続ける涙を拭ってくれる。

でも私は反応一つせずにそこにいるだけ。
まるで毎日の私、は人形みたいだった。


その日も、またいつもと変わらず私はそこに在った。

朝にはルッスーリアがきて服を丁寧に着替えさせる。
今日の服はシンプルで真っ黒なドレスであった。


けれど、私は何も言わない。


昼にはベルとスクアーロが来て食事を勧める。
今日のランチはいい香りのするミートパイだった。


私は今日も食べない。


夜はレヴィが、布団をかけにくる。
ふわふわの羽毛に私は包まれた。


けれど布団は肩から虚しく滑り落ちた。


深夜0時頃にマーモンが来て、いつもと同じ一言を告げる。

「今日も、ボスは見つからなかったよ。」

でも絶対に見つけてみせるからね、とマーモンはやっぱり優しかった。


扉が閉まってから決まって、私の瞳から涙が零れる。よく毎日泣き続けて水分が無くならないなあ…と感じた。

これで一日が終わる。

これで一日が始まる。



ザンザスはきっと見つからない。
だからきっと私もザンザスがいた頃には戻れずに、其処に在るだけが続く。
皆は私に戻って元気になってほしいと願いながらザンザスを探し続ける。

一生世界は同じように回り続けていく。





叶いそうにもありません

(私が死んだら、きっとザンザスは見つかる。)
(私の座り続ける床下から。)
(だから皆の望みは叶うことがない。だって彼は皆を守るために死んでしまった。)
(皆に秘密にして欲しいというのが彼の望みだったから、今日も明日も明後日も…私はその約束を守るためそこに在り続けていく。)



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