振り夢

□すきの言葉は最後までとっておく
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「ありがとうございました!」






ああ、私の3年間の高校生活もこれで終わりなんだ。


式も終わり、教室に戻ると先生の話。
柄になく流れてくる涙を止めてくれないかな。
涙をこらえながら話す先生の声を聞くと、ほらまた涙が。
話も終わり、クラス代表が先生に挨拶をして最後の言葉を言う。
感謝の言葉だけじゃ伝えきれないくらいにお世話になった先生。
ずっと先生がいいです、なんて我が儘だよね。
さよならの挨拶を終え、クラスの仲のいい友達と写メ大会。
時代は進化して、携帯でも写真を撮れる時代に。なんて古臭い考え。
そんな写メ大会に疲れ、自分の席に着く。







―ああ、準太だ。






ふと廊下を見ると、準太の姿が。


「ちわっす」



照れ臭そうに頭を掻きながら、気づいてくれるのを待ってたかのように話しかけてくれた。
そんな準太の姿を見て、また涙があふれてきた。
きっとまだ、学校に未練があるからだ。
思わず、駆け寄って抱きついてしまった。



「じゅ・・んたぁ」

「せ、先輩!?どうしたんスか」



準太の声に驚きが。
しかも、さっきも赤かった準太の顔がさらに真っ赤に染まっていた。
いきなり抱きつくなんて、ほんと私どうかしてる。今日の私、おかしい。
後輩に泣かないでくださいよ、なんか言わせてるしさ。



「だって…準太の顔見たら、また泣きたくなったんだもん」



「えっ、そうなんスか?先輩、今日やけに甘えてくるっていうか…なんつーか・・・



「何て言ったの?」

「い、いや何でもないっス。そ、そろそろ離れてください…!」

「あ、離れるからっ。いきなり抱きついてごめんねぇ」



準太ってさすがピッチャー。体はもうしっかりしてて、筋肉もついてて、何と言うか抱き心地がよかった。
もうちょっと抱きついていたかったな、なんて無理なことを不覚にも。
そしたら、少しの沈黙が流れ、いきなりかしこまって、




「先輩、今まで2年間ありがとうございました!」




突然の感謝の言葉に声が出ない。
少しは休んでた涙腺がまた働き出してしまったじゃないか。
心なしか準太の声色にすこし涙が。
涙を我慢しながら声を張って言ってくれた準太を見て、さらに泣けてきた。


「…わ、たしの方こそありがとねっ。準太の投げてる姿見れてよかった」

「オレ、和さんたちの分も頑張ります!」

「そう!そのいきで和己たちの分も頼むね。甲子園での活躍した準太が見たいな」

「先輩の頼みなら仕方ないっスね。甲子園目指して頑張っていきます!」



ニカッと笑らって、頼もしい笑顔と言葉に安心した。
そのあと、言葉をすこし詰まらせた準太。
何か言おうとしてる…。







「それと話変わるんスけど……オ、オレ…先輩のことがすきで…」








「まった!その先は言わないで。いつか私から言うから」



すきと言おうとした準太の口を手で押さえ、主導権を握った。
その意味は分かるでしょ?、と笑らうと、その意味を理解し口元に弧を描く準太。




「あ、はい!卒業おめでとうございますっ!」



と、明るいいつもの準太がいたのでした。




すきの言葉は最後までとっておく
(今は言わないけど、甲子園出場出来たらゆったげる!)



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卒業おめでとう!
末永く応援しましょう^^

20080311
早田ゆあ

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