振り夢

□授業中に落書き禁止!
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授業中ってなんだかすごく暇じゃない?
みんなはしっかり先生の話を聞いてるけど、一方あたしはそんな話など役に立たないと可愛くない理由をつけて机の落書きに集中。
ノートには何も書かないで、机には文字がぎっしり。
どうせノートなんて教科書の要点をまとめるだけじゃない。そんなの一人でも出来るわ、と黙々と落書きを続ける。
幸い、先生にバレない窓際の一番後ろ。今の季節、風が心地よくて気持ちがいい。
そんな文字いっぱいの机に顔を近づけ、シャーペンを走らせる。




“かっこよくて、優しい阿部がすき”




愛の告白ともとれる落書きを書いて、口では言えない”すき”を表現してみる。
相手は隣の席で授業も聞かず、寝ていて寝苦しそうな顔をしてる。
すると、


「お前、何書いてんの?」


突然、さっきまで寝ていた彼が尋ねてきた。突然すぎる相手の質問にかなり動揺する。
あたしは寝ているもんだと思って、黙々と落書きをしていたのだから。


「べ、べつに。寝てたんじゃないの?」

「いいや、起きてた」


意味の分からない答えにまた動揺する。寝てたのに起きてた?
考える力の乏しいあたしにとっては難しすぎる返答だったのだ。
寝てるのに起きてたって…狸寝入りってやつなのかも。
そして、続けて質問をしてきた。


「それよりさ、何書いてたんだよ。そんなに必死に」

「なによっ。狸寝入りしてたくせに」

「はぁ?そんなもんしてねーよ。ただお前が勘違いしてただけだろ?」

「もう。そーでしたっ。あたしの勘違いですよーだっ」


あたしは愛しい彼に少しでも構ってほしいからと強がりを言ってみる。
すると優しい彼は分かったって、と優しい笑顔を向けてくれる。もちろんにっこりとまではないけど、微笑む程度の笑顔。
普段の彼は少しぶっきらぼうでクールすぎるから、あまり女の子にはいい印象を持たれないけど、あたしはそんな時折見せる笑顔がだいすきなんだ。
あたしにだけってのも特別な感じがしてとても心地いい。


「あれは食べもんの事とか今日の練習の事とか考えてたわけ」

「そうなんだ!なんかすごいね」

「そんな事もないけどさ。オレが考え事してたとき、何か言ってたよな」

「何を?あたしにも言ってないと思うけど…」


これまた予測できなかった質問に困った。
あのときのあたしは落書きに夢中で何もしゃべってないと思うんだけど…何か言ったのかな?
人は集中すると1つのことにしか頭がいかないからな。
彼は少し困ったように、照れたように頭を掻きながらぼそりとつぶやく。






「かっこよくて優しい阿部がすきって」





その言葉のあと、あたしの顔は真っ赤に染め上がり、授業中と言うのも忘れて思いっきり嘘だ!と一言。
その後は言うまでもなく、先生に怒られて難しい問題を解かされる羽目に。



あべのばーーーーーーかっ!



授業中に落書き禁止!
(最初っから聴こえてたんだよ、ばーか)


―――
阿部くんは地獄耳だったら
すごく面白いと思います←

早田ゆあ
20080601

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