甘露担当短編、未完

□効果音
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私は囚われた。

何故にこんな無粋な真似をされなければならないのか、全くもって理解出来なかった。

そもそも囚われる理由が分からなくて、そして誰によって囚われたのか。

そこが重要なのだ。



「やあ、お姫様。ご機嫌は如何?」

「パリストン・・・」

「元気そうで安心しました。」



ハラリと目隠しを外されれば、其処は高級ホテルにも似た創りが施された副会長室が現れた。

見上げるとやっぱりパリストンだった。



「なんで?」

「なにが?」

「なんで私を捕らえたの?」

「それは、貴方が危険人物だからです。」

「じゃあ危険人物は全員捕らえるの?落魄れたものですね。」



嫌味ったらしく棒読みで言えば彼は白い歯を見せてキラキラと笑う。

吐き気がするその作り笑いに、私は顔を顰めた。



「貴方は特別なんです。貴方の能力は恐ろしい。」

「なにが?」

「この世界が壊れてしまうほどに強力な力・・・」

「・・・・」

「だから捕らえました。」

「なんとも簡単に説明有難う。」



彼は一ミリも思っていない。

世界が壊れる?

そんなの私には出来ない。

世界の因果律を壊すことなんて、普通の人間では出来ない。



「貴方は普通ではないですからね。」

「心読むな!」

「貴方の思うとおり、ボクはなんとも思ってませんよ。世界についてなんて。」



嗚呼、やっぱり。

お前はズル賢いからね。



「貴方が手に入るのなら・・・」

「私はまた抜け出すよ。」

「それは残念だ。」



そうやって彼は全然残念な素振りをしない。



「貴方を愛してます。」



そう言い終わればキスをされた。

これがパリストンにとっての優しい嘘。



-ねぇ、優しい嘘を吐くくらいならいっそ、



(本当に愛してるなら逃がさないで、)

(逢瀬の儘にお姫様)



冷たいナイフで心を抉り取ればいいよ。

私が何にも染まらないように、詰め込めばいいよ。















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引力操作。

2011.12.20 特別書き下ろし


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