甘露担当短編、完。

□ネイビーブルー
1ページ/1ページ

―ほらね

私を貶すかの様に、笑う。
そのグチャグチャの黒い感情を剥き出しに笑わないで。
そう私が思っても彼の中の世界は何も変わらない。

「形あるものを壊したくなるのが人間の心理だよ。」

ゆっくりと彼は花瓶に飾ってある花弁を指で撫でながら言う。
それからその花をグシャリと握り潰した。
花弁がハラハラと床へ落ちる。

「君がその座敷牢にいる限り、俺は手を出さない。」
「シャル、貴方が閉じ込めた癖に。」
「うん、なんかねアイツの所に君が居るなんて、拘束されてるなんて不愉快だったから。」

光の無い闇色の瞳で私を見据える。
背筋がゾクリと冷える。
呼吸よ、心臓よ、止まれ。
そう念じてしまう程にオーラの圧が重かった。

「やっと君を自由に出来たんだ。」
「自由…?」
「でも残念ながら俺の檻に入って貰うけど。」

何故、彼らは此処までしつこく私を縛るのか。
どうして血が流れるのか。
悲しくなってしまう。

「どうか、泣かないで。」

シャルの手が伸びて、私の涙に触れる。


(泣かれたら困るよ、)(じゃあ笑っているわ)



罪を意識したら後は罰を受けるのみ。









-----
ネイビーブルー 特別書き下ろし。

2011.12.20


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ