Short Dreams

□双子が前髪を切らない理由
1ページ/1ページ

「週末のパーティーに備え、本日は城に美容師を呼びつけております
必ず本日中に、特にその長くなった前髪をきちんと整えるよう、王様から仰せつかっておりますので...ジル様?ベル様?」



オレ達にとっちゃどうでも話だから、最後まで聞かずに抜けだしてやった

遠くの方で伝達係がオレ達を探してる声が聞こえたけどそんなの知らね



『「だってオレ王子だもん」』






そもそもオレ達が前髪を伸ばしてる理由知ってる?

原因は全部あいつらにあるんだぜ?







†双子が前髪を切らない理由†










―ある日、

ベルに食わせるミミズ入り泥だんごを作るために、オレは一人で庭にいた。

綺麗な花が咲いてる花壇のそのすぐ脇、
スコップを求めて入った薄汚い物置小屋。


暗がりの中ようやくスコップを見つけ手にとった瞬間、誰かが物置小屋に入ってくる気配がした。

見つかるとめんどくせーから、物陰に隠れて様子を伺うことにしたんだ。

それがそもそもの間違いだった。



入ってきたのは若い執事とばばぁ(あ、女王様、つまりオレの母親ね)。

奴らはオレが隠れていることに気付かずに、いちゃつき始めた。



ドレスを身につけてるだけの雌豚に成り下がった2児の母



オレは目を覆いたかったけど、手にはスコップがあったし、ショックで瞼も閉じられなかった。












―ある日、

ジルに向かってナイフを投げたら、飼ってたカナリアに刺さって死んじゃった。
だから新しいのを買ってくれって、じじぃ(あ、王様、つまりオレの父親ね)に言いに王の間に行った。

ノックしようと思ったら、扉が少し開いてたから覗いてみたんだ。


部屋の中の光景を目にした瞬間、覗いたことを後悔したよ。


頭に王冠のっけた中年親父が嫌がるメイドを壁に押し付けてんの。



一国の主の醜い姿



オレは目を覆いたかったけど、体が上手く動かなくて出来なかった。












『なぁジル、お前何で前髪伸ばし始めたんだよ?』

「...見たくもないものを見ないようにするためってとこだな
お前は?」

『オレも同じような理由』

「ししっ、腐っても双子だな」






†双子が前髪を切らない理由†



それは穢れた世界から目を背けるため。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ