でらデラDERA

□凸凹
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藤真「お前が好きだ」

諸星「・・・俺も好きだぜ」



放課後の化学室で始まった僕らの関係


誰もこの秘密を知らない・・・だからこそ燃える



藤真「・・・くっ・・・」

諸星「我慢しろって・・・声聞かれたらどーすんだよ」

藤真「テメェがっ・・・抑えねーからだろっ・・・」

諸星「だって藤真、すげー可愛い顔してるから」

藤真「・・・喋んなっ・・・」



人の気配が無くなった夕暮れ時、決まって僕らは愛し合った


それは何にも変えられないほど幸せな時間で


きっと互いに思っていただろう、これがずっと続くんだって・・・



諸星「ヤベー、待たせてんな」



毎日同じ時間・同じ場所で会うのが暗黙の了解


しかし、どちらかが遅れる事も多少はあった。


待たせていても、ごめんの代わりにキスをしてやれば、そこから火が付く


今日もいつものパターンかな、なんて考えながら化学室へと向かった。



「やっ・・・あ!」

「チッ、声出すな」



化学室のドアに手を掛けようとした、すると何やら卑猥な声が聞こえる


先客かよ・・・と盛り上がっていた気分が落ち、Uターンしよう足を踏み出すと



「・・・好き藤真!」

「うるせぇ」



女の声で藤真の名が呼ばれ、その声に聞き慣れた声が返事をしていた。


・・・空耳かもしれねーし、女が勝手に藤真の名前を呼んだだけかもしれねー・・・


そうあって欲しいと願いながら、俺はドアの小窓を覗いた。



諸星「・・・マジかよ・・・・・・藤真・・・」



それは紛れも無く俺の愛した藤真で、半裸の女と繋がっていた


俺の願いは虚しくも砕け散った。


ショックだった、悲しかった、ブチ切れそうだった


だけど、俺はそのまま暗くなった廊下を歩き、家路に着いた。




鞄に入れっぱなしにしていた携帯が、いつまでも鳴り続ける


こんなにしつこく掛けて来るなんて、アイツぐらいしか居ない


でも、出てやんねーよ。折り返しもしてやんねーし、メールも送らねー。


携帯が鳴り止んだ頃には、電源を切ってやる。




たった一度の行為かもしれない、だけど俺は許せなかった


藤真を好きだからこそ、愛してるからこそ許せなかった


だけどアレが普通の男なんだよ、仕方ねーじゃねぇか・・・


ベッドに寝転び、目を閉じた自分に言い聞かせた。




全てを捨てたくなった俺は、次の日には退学届を学校に提出し


1人見知らぬ街へと旅立った・・・誰にも告げぬまま。







あれから半年が経ち、俺はバイトをして生活していた。


住み込みで働ける所を探し回って、ようやく見つけた場所だった。


アイツの事なんて忘れて、心機一転新しい生活を手に入れたところだったのに


1本の電話で・・・落ち着いてた心が、呆気なく乱された・・・



牧『藤真が入院した』

諸星「・・・え?」



新しく購入した携帯には、1人の番号しか入っていない。


そいつの口から何の前触れも無く、藤真の名前が出たのだ


牧は黙った俺に一生懸命説明してるが、何一つ頭に入ってこない


唯一ハッキリ聞こえた言葉が・・・


”とりあえず翔陽まで来い、話はそれからだ”




脳に伝達された時には、もう走り出していた


・・・藤真が・・・死んだら・・・どうしよう・・・藤真が・・・・・・藤真っ・・・!!


ぶつかった人に謝る余裕なんて無くて、ひたすら走り続けた



諸星「牧!!」

牧「諸星!」

諸星「藤真は!?病気なのか!?」

牧「・・・重くはないが一応病気だ、胃潰瘍らしい」

諸星「胃潰瘍!?」

牧「あぁ、何日か入院すれば大丈夫みたいだ」

諸星「そう・・・そうか・・・・・・良かった・・・」

牧「・・・良くねぇよ・・・」



病状は軽いと聞いて安心した俺だったが、牧の表情は冴えなかった


俯く横顔を見つめていると、牧はそっと力のない声で話し始めた



牧「体はすぐ良くなるかもしれねぇが、心はボロボロだぞ・・・」

諸星「・・・何?」

牧「・・・バスケ、しなくなった」

諸星「え・・・」



何よりも好きだったバスケットを、藤真はやらなくなった


俺には信じられない言葉だった。



牧「バスケしねぇ、笑いもしねぇ・・・目は虚ろ・・・カウンセラー付けてもダメで」

諸星「・・・マジ、かよ・・・」

牧「それに・・・・・・アイツ喋れなくなったんだ」

諸星「・・・!?」

牧「2ヶ月前くらいから、ずっと筆談・・・」

諸星「・・・な・・・なん、で・・・」

牧「お前が原因だろ!!全てお前のせいなんだよ・・・!」



突然居なくなったお前を、藤真はずっと探してた


お前が見た現場・・・きっとそれを見て居なくなったんだって


ずっと自分を責めて、毎日泣いてたんだ


もう繋がらなくなってたけど、いつか連絡が来るんじゃないかって


どんな時でも携帯だけは、肌身離さず持ってた




牧の口からその言葉達が出切った後


自分がした罪の大きさに、意識が飛びそうになった



牧「だから、会ってやってくれないか・・・藤真を治せるのは、お前しか居ないから・・・」



断る理由は無かった、寧ろ早く会いたかった


牧に連れてってもらった病院、藤真の居る病室を聞いて


俺は1人で、藤真の元へと向かった。




藤真の居る202号室は、1人部屋らしい


近付いていく距離と比例して、俺の緊張は高まっていった


目的の病室の前に付き、大きく深呼吸・・・


2回ノックをして、静かにドアを横に引いた・・・



諸星「・・・藤真」

藤真「・・・!」



そこには綺麗な髪の色をした藤真が居て、俺を見つけると目を見開いていた



諸星「・・・久しぶり、だな・・・体調、良くなったか」

藤真「・・・う・・・うっ・・・・・・うぁ・・・」

諸星「藤真・・・」

藤真「・・・も・・・ろ、ぼし・・・・・・もろぼし・・・諸星・・・諸星!諸星!!!」

諸星「藤真・・・!」



ぎこちなく話し掛けると、藤真は嗚咽しながら必死に声を出そうとしていて


俺の方へ両手を伸ばしながら、俺の名前を何度も叫んだ。


それは赤ん坊のようで、大泣きしながら俺を呼ぶ


そんな藤真が愛しくて、伸ばされた手を掴み、キツくキツく抱きしめた・・・



藤真「もろ、ぼし、諸星・・・・・・会い、た、かった・・・」

諸星「藤真・・・ごめんな・・・・・・ごめん」

藤真「良、かった・・・生き・・・てた・・・」

諸星「・・・うん、ちゃんと生きてるから・・・藤真・・・」



俺は泣き止まない藤真の背中を擦り、藤真は俺が離れない様シャツを握り


止まった時間を埋めるように、ただずっと抱きしめ合った



諸星「ひとつ、治ったな・・・」

藤真「・・・な、に・・・」

諸星「声・・・出るようになった」

藤真「諸星・・・諸星・・・」

諸星「何・・・?」

藤真「・・・も、う・・・居なく、なんな・・・・・・俺の前、から・・・消え、んな・・・」

諸星「・・・うん」

藤真「け、けいたい・・・・・・教え、ろ・・・・・・」

諸星「・・・うん」

藤真「・・・諸星・・・あい、してる・・・」

諸星「・・・俺も愛してる・・・・・・愛してるよ藤真・・・」




藤真は俺を傷つけ、俺は藤真を傷つけた


だけどその傷は、今からでも十分治せるじゃねーか


何もかも水に流そう、今までのことは忘れたらいい


2人一緒なら、一緒じゃなきゃ、お前が居れば、お前が居ないと


やっぱり、ダメなんだ・・・。







諸星「・・・という夢を見たんだ」

藤真「不愉快。

諸星「今年の初夢なんだZE!」

藤真「何で俺とテメェが恋人同士なんだクソが!!」

諸星「俺にも謎〜、にゃぞ〜〜、にゃぁ〜〜、ちょ、コレ可愛くね?」

藤真「ったく冗談じゃねーよ、ぶっ殺すぞ」



俺達は・・・友情でしか繋がってません。


・・・友情すら・・・?だけどね。














END。













 

20100614

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