でらデラDERA

□ラーメンズ1
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どうやってここに辿り着いたのか、自分でも覚えていない。


薄暗い路地の行き止まりに、それはあった




水戸「いらっしゃいませー。バニーボーイの店、ラビリン愛知の星店へようこそー」




決して派手ではなく、されど地味でもなく


夜に映えるこじんまりとした装飾に目を引かれ


オレはドアを開いてしまった




水戸「お客さん初めてだよね?見ない顔だ」

桜木「お、洋平客か!」

水戸「そのようだぜ?ま、中に入れよ」




ギィーっと鳴ったドアの向こうには、モノクロで包まれた壁や床。


オシャレだな、と思っていたのに、目の前に現れたのは黒ずくめの男


黒いYシャツに黒いズボン、そして白い蝶ネクタイ。


片手にはタバコを持ち、頭には黒くて長い耳・・・がついている


その男に話しかけた一際目立つ赤い頭


かなりガタイが良い。背も高くて、低い天井がさらに低く見えた


その赤頭の上にも黒い耳があった。


何秒か前に聞いた言葉を思い出す・・・・・・バニーボーイの店・・・


・・・こいつらがバニーボーイってやつなのか。




水戸「おーい、突っ立ってねーで入れって。冷やかしで来たのか?」

清田「あ、いや・・・状況が飲み込めねぇっていうか・・・ココ、何の店っすか?」

水戸「バニーボーイの店だっつってんだろ。まー・・・ホストみたいなもんだ」

清田「ホスト・・・」

水戸「そのホストがうさぎっていうだけだよ、分かった?」

清田「はぁ・・・」

水戸「男しか居ねーけど楽しいぜ?おにーさん元気ないみてーだし、パァっとやろうや」




ニッと白い歯を見せた黒いうさぎは


ドアの前に立ち止まっていたオレを、店の中へと連れて行く。


すると徐々に聞こえてきる賑やかな声に、不安な気持ちが薄れていった




水戸「今空いてる席ここしかねーんだけど、大丈夫かな?」

清田「あ、ハイ・・・それは構わねぇっすけど・・・」

水戸「悪いな。ルカワ、メニュー持ってきて」

流川「・・・ん。」




通された場所は、いくつかあるボックス席では無くカウンターだった。


バーテンも居るようで、グラスを拭きながらいらっしゃいませと声を掛けてくる。


メニューを取りに行った無愛想なヤツとは正反対で


ずっと笑顔のままオレの顔を見ている・・・ヤケに怖い。


そのバーテンの頭にも、メニューを取りに行った野郎にも


当たり前のように黒い耳がついていた。




流川「ん」

水戸「サンキュー。おにーさん、何飲もうか?」

清田「えーっと・・・オレあんま酒強くないんで・・・どうしよう」

神「じゃあ、適当に作りましょうか?ノンアルコールもありますよ」

水戸「そうする?」

清田「あ・・・お願いします・・・甘めで」

神「かしこまりました」




店内に居る野郎共は、どいつもこいつも本当にデカくて・・・


威圧感に耐えられなくなりそうだ。


だけど、接客してくれてるタバコのうさぎは、オレより背が小さくて少しだけ安心する。


座っても視線が同じ高さにあるのが心地良かった。




水戸「で、誰にする?」

清田「・・・誰って・・・え?」

水戸「指名するだろ?仕組みはホストと変わらねーから。あー、おにーさんはキャバクラか」

清田「し、指名って言われても・・・男しか居ないんじゃ・・・」

水戸「そーだけど」

清田「・・・指名しなきゃダメなんすか?・・・それならアンタでいいっす」

水戸「俺はダメだよ、ただのボーイだから。耳はつけてっけど」

清田「えぇ〜・・・マジっすか・・・」

水戸「メインはアイツらだから、今居るバニーボーイ達を紹介してやるよ」

清田「はぁ・・・」




トンとオレの肩に手を乗せ、スーっとタバコの煙を目の前に漂わせる。


椅子を後ろへ回転させると、楽しそうに話すボーイが数人目に留まった




水戸「まずアレな、真ん中で笑ってる剣山みたいな頭の野郎。アイツはセンドー」

清田「・・・なんだありゃ。」

水戸「アイツなりのこだわりなんだってよ。ちなみにウチのNo.2だから」

清田「へぇ・・・」

水戸「その右隣のボックスに居るのが、ウチのNo.1だ。キラキラしてんだろ?」

清田「確かにっ・・・本家のホストで十分稼げそうっすね」

水戸「ホストやってたんだよ。けど、説教ばっかりで苦情が相次いだんだと。あぁ見えて男クセーから」

清田「・・・意外だ」

水戸「名前はフジマな。特技は張り手だから、やられねーように気をつけろ」

清田「ち・・・近付かなきゃ平気でしょ・・・」

水戸「次はこっち。センドーの左隣に居るのがサワキタくん。新人なんだけど、もうNo.3になった野郎」

清田「ほー・・・みんなイケメンっすね」

水戸「そう?おにーさんも負けてねーと思うぜ?なんか動物っぽいけど」




よく言われます、そう呟くと、タバコうさぎとバーテンが小さく笑った


タバコうさぎはその後も店内に居るバニーボーイを紹介してくれた


紹介してくれたのはいいけど、全員接客中で指名するにも出来ない。


いや、むしろ指名したくは無いんだけど、そういう訳にもいかねーだろうし・・・


どうしたらいいものか、と眉を寄せ唸っていると、タバコうさぎがポンと手を叩いた




水戸「あ、1人忘れてた」

清田「まだ居るんすか?」

水戸「居るよ、この店の一番上の先輩だ」

清田「へぇ・・・なんで接客してないんすか?結構客入ってんのに」

水戸「それは〜・・・ねぇ」

神「うーん・・・」

清田「?」




バーテンとタバコうさぎは目を合わせ、困ったような笑いをしている


・・・苦笑ってやつだろうか。




清田「何か問題でも抱えてるんすか?」

水戸「まぁ〜・・・その人は良い人なんだよ、憎めないっていうか」

清田「はぁ」

水戸「性格は悪くねーんだけど・・・・・・接客が下手っつーか・・・マイペースっつーかさ・・・」

神「・・・不思議な人なんです」

清田「ふーん・・・」




嫌われては居ないんだろうが、隠したいのかな?


でも、隠したいならその存在をオレに教える訳ねーだろうし・・・


接客業なのに接客が下手。そんなの聞いたら見たくなるじゃん。


決めた、そいつを指名する。タバコうさぎにそう伝えた。


するとタバコうさぎとバーテンは2人して、顎が外れそうなぐらい口を大きく開けた


あれ、指名しちゃマズかったのか?


小首を傾げたオレを見て、タバコうさぎはタバコを消した。


そして大きな声で




水戸「も、モロボシ先輩!ご指名です!!」




バックヤードに居るであろうそいつに、叫んでいた。




仙道「・・・モロボシ先輩に指名が入った・・・」

藤真「マジかよ!?アイツ大丈夫か・・・」

沢北「え・・・あの人まだ居たの?」

桜木「あ?モロボシって誰だ、洋平」

水戸「大先輩だろーが・・・名前ぐらい覚えとけ」

流川「・・・どあほうが増える」

神「無事終わりますように・・・」




ざわつくバニーボーイ達を余所に、1人の男がオレの方へと歩いてきた


目の前でピタっと立ち止まり、オレを見下ろす。


・・・ぐっ・・・コイツもデカい・・・


見上げる首が痛くなった時、そいつはスチャ!っと片膝を床に付け跪いた。


今度はオレが見下ろす番だった




諸星「ご指名ありがとうございます、モロボシです。バニーボーイの店へようこそ」




・・・・・・ちゃんとしてんじゃん。ちゃんと喋れるじゃん。


しっかりとした挨拶にオレは何も感じなかったけど、どうやら周りは違うようで。


フジマは不安という字が顔に浮き出るんじゃないかというぐらいに、眉毛が八の字


センドーは目が泳ぎ挙動不審、サワキタは大きな溜息ひとつ


トップ3の動きを停止させ、視線を独り占めにするこの男


・・・よーし、じっくり観察してやろうじゃねーか。




水戸「・・・じゃ、俺はこれで・・・先輩、宜しくお願いします」

諸星「おー、まかせろ」

神「・・・何飲みます?」

諸星「水!」

神「は、ハイ」

清田「・・・チューッス」

諸星「最近何してたんですか〜?全然来てくれないから寂しかったですよ〜」

清田「え?オレ初めてなんだけど・・・」

諸星「そのネックレス何所で買ったんです?でらイカす!」

清田「いや、してねーし」

諸星「今日暑かったよねー、わっち暑がり」

清田「・・・あ?あんだって?」

神「・・・ふー・・・」




 
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