でらデラDERA

□ラーメンズ1
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モロボシはオレの隣に座り、バーテンに出された水を飲みながらずっと喋り続けている。


それはいい、黙られるより数倍マシだ


けどよ、1人で喋りっぱなしもどうよ?客であるオレの言葉を差し置いて。


しっかり目を見て話してくるけど、会話が噛み合ってねーんだよ


・・・それに何だ、その顔は。両頬にある3本の線は何だ。鼻が黒いのは何でだ。


そんなの他の野郎にゃ付いて無かったぞ


まさかテメェ・・・自分で書き足したんじゃ・・・なんかマジックっぽいし・・・




清田「やいっ、オレの話も聞きやがれっ」

諸星「へぇ〜〜、そんなこともあるんだぁ」

清田「まだ何も言ってねぇ!!」

諸星「そうか、間違えた。よく間違えます。」

清田「・・・お、おう・・・オレの話、してもいい?」

諸星「うん、聞く」

清田「あのな、実はオレ、今日彼女にフラれちゃって」

諸星「・・・・・・あ、ごめん。聞いてなかった」

清田「何で聞いてねーんだよ!?聞くって言っただろーが!!」

諸星「ワンモアタイム」

清田「・・・だからぁ、彼女にフラれちゃって、傷心中なの」

諸星「うーん・・・じゃあさ、フラれる前は何だったの?」

清田「は?」

諸星「彼女にフラれたんでしょ?そのフラれる前は何だったかって聞いてんの」

清田「・・・し、幸せな彼氏だろ?」

諸星「フラれる前は彼氏だったんだね?」

清田「・・・そうだっつってんだろ!!」

諸星「そうだよね、彼氏じゃないと彼女って言えないもんね。パってひらめいた。」

清田「・・・・・・なっ・・・何なんだよコイツは!!!」




真剣な顔で当たり前の事を話すモロボシに、オレの血管がブチ切れそうになる


話題を提供したオレに対して、ありきたりな言葉でも投げかけりゃいいだろ


それが一番簡単なんじゃねーのか?


なのにコイツは、通り過ぎていい場所で立ち止まる


オレも流せばいいのかもしれねーけど、イノセントな目で見てくるから


こっちが合わせなきゃいけねーのか・・・と錯覚してしまいそうになる




諸星「ったく、激しいヤツだな。ちょっと落ち着こうぜ?」

清田「テメェがそうさせてんだろーが!!」

諸星「あ、ごめん。少し席を外すよ、交信の時間だ」

清田「コウシン・・・って何だよ?」

諸星「月にうさぎが居るのは知ってるかい?あれはね、俺の父親なんだ。だから毎日こう」

清田「座りやがれこのデンパ野郎!!」

諸星「おぉっ、俺の魅力にやられちゃったかな?見る目あるね」

清田「ちょ、マジで一旦オレの話聞こう?一応、相談ってやつをしてんだからさ」

諸星「それより何か食べない?腹減った」

清田「オレは減ってねぇからいらねー」

諸星「何だって!?俺は9時間も別室で何もしてなかったっていうのに!!」

清田「知らねーよ!!飲み食いぐらい勝手にやりゃぁいいだろ!!」

諸星「・・・うぅ・・・」

清田「・・・わ、分かったよ!食いモン頼んでやるから、オレの話聞こう!?」

諸星「OK・・・何でも聞いてるよー♪」




黒い耳を付けてるにも関わらず、自分の手を耳に見立て聞いてるとアピールする。


心の底からイラっとした・・・と、同時に体中が痒くなった。


あぁ掻き毟りたい!!体毛全てを掻き毟りたい!!




諸星「焼きうどんかパンね」

清田「あ、あぁ、分かった。お願いしていいっすか」

神「はい、かしこまりました。水戸くん、オーダーです」

清田「それでね、フラれたんだけど、オレは納得してなくて」

諸星「納得してないのかぁ・・・ナイス」

清田「・・・うん、それでね、ヨリ戻したいって思ってて」

諸星「ヨリ戻したいんかーい、チャンチャン☆」

清田「真面目に聞けこるぁあああああ!!」

諸星「・・・それで?どんな話?」

清田「・・・ハァ・・・だから、オレは諦めきれねーんだ。どうしたらいいと思う?」

諸星「そうだなぁ、全体的に話の内容がよく分からなかった」

清田「分かるだろーが!!テメェが茶化してんだぞ!?」

諸星「フーン・・・」

清田「・・・何でオレが悪いみたいな顔してんだよ!?」

諸星「お前さ、人と話すの苦手だろ」

清田「ふっざけんな!!テメェだろーが!!つーか客にお前って何だコラ!!」




はぁっ、はぁっ、い、息苦しいっ・・・・・・


彼此20分くらい格闘してるだろうか、モロボシとの会話に進歩が無いまま。




清田「お前も男だろ?そういう経験が無いわけじゃねーだろーが、アドバイスしろっつーの!」

諸星「パン美味いよ、食わないの?」

清田「全部やるから話を聞け!!」

諸星「あ、ちょっと口の中見てくんない?ちゃんと噛み砕けてる?あーーー」

清田「きったねぇな!!んなもん見せんじゃねぇ!!」

諸星「消化されなかったらどーすんの?腸詰まったら責任取ってくれんの?えぇ?」

清田「なっ、喧嘩売ってんじゃねーよクソうさぎ!!」

諸星「く、クソ、だとっ・・・?まるで人をウンコのようにっ・・・なんてヤツだ・・・ひどすぎる・・・くっ・・・」

清田「・・・あ、いや・・・ごめん、勢いで言っちまった・・・悪かった・・・泣くなよ・・・」

諸星「うっそー☆パンうめぇ」

清田「あああああああああああ!!!」

諸星「なになに!?気集めてんの!?元気玉!?」

神「・・・やっぱりこうなる運命なんだ・・・」




もうどーでも良くなった、何もかもが。


こんなに怒り狂ったのは久々・・・いや、初めてかもしれん。


気持ち悪いイラつきが収まった頃には、なんでかスッキリしてた。


モロボシは新しいストレスを増やすから、溜まってたストレスが押し出されたのかな・・・


目の前に居るのが救いようのないバカで良かったのかもしれない


彼女にフラれたから何だ、こんな近くに底の知れないバカが居るじゃねーか。


それに比べりゃオレのことなんて対した事ナイナイ


そう考えよう・・・ポジティブに考えようぜノブナガ!!




清田「・・・疲れたから帰るかな」

神「お帰りですか?」

清田「ハイ、気分転換にもなったし、そろそろ帰ります。明日朝早いんで」

神「そうですか、水戸くーん」

諸星「もう帰んの?これから盛り上がんのに」

清田「や、もう十分盛り上がったんじゃね?声かすれてるしよ」

水戸「ありゃ、おにーさんもう帰っちゃうの?」

清田「ウス。ドっと疲れたもんで・・・」

水戸「・・・そーか、じゃ、勘定しちゃおう」

清田「うーっす」

神「また来て下さいね」

清田「・・・・・・それはどーかな」

諸星「来いよ、今度は同伴な」

清田「しねーよバカ!!」

神「案外、いいコンビですよ」

清田「じょ、冗談!!こんなのとコンビなんて嫌っすよ!オレはもっと大人な人が」

諸星「ま、いいんじゃない?た・ま・に・は、らしくないこともさっ♪」

清田「何なんだよそのノリはよ、腹立つんだよ!パン食ってクソして寝ろ!!」

水戸「おにーさん、ハイお釣り。」

清田「ども・・・んじゃオレはこれで」

神「ありがとうございました」

水戸「またおいでね」

諸星「同伴の前は連絡しろよ、今度は焼きうどんな」

清田「うるせーバカ!!・・・お邪魔しました」




笑顔で見送ってくれた3人に背を向け、オレは店の外へ出た。


外は真っ暗なままで、薄気味悪さもまだ残ってる


だけどバニーボーイの余韻に浸ってるオレには、そんなの関係なかった。


やっぱりオレには、男同士でバカ騒ぎしてるぐらいが丁度良いんだ


・・・気が向いたら、もう一度遊びに行くかな。


モロボシ対策でも練って、またバカ面を拝むのも悪かない。


 

・・・・・・はて、ドウハンって何するんだっけ・・・・・・


ま、いいや・・・それも今度聞いてみっか。














END。














 
20100614
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