君と出逢ってまた恋をした

□「野外生活・前編」
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「うっわぁ〜Vv」

バスの窓から
外を眺めてはしゃぐのは
この話しの主人公である
星安 ゆきなだ。

まるでその姿は
子供のようだった。


今日から
ゆきなたち一学年は
第2回の行事イベントでもある野外活動中だった。
ちなみに今は長野県へ行く観光バスで移動中である。

「ゆきなー
あんまり窓に張りついたらあかんで?」

「お前が言うなっ(怒)」


ゆきなを注意するのは
親友の金谷 亜美。
しかし当の本人は
担任の旭川 雷にべったりとくっついていた。

「雷ちゃん相変わらずモテモテだなぁ〜Vv」

亜美と雷ちゃんを茶化すのは
男友達の中原 良が
陽気にからかっていた。

「わぁっVv
すっごぉいっVv

なんで景色はこんなにキレイなのに
あたしの隣りがなの?」

じとっと隣りに座る
海を睨むゆきな。

「…っ(怒)」

口の端をひくつかせながら
海はゆきなを見る

「あのなぁ
俺だってお前の隣りなんかいやじゃあ
こんボケぇっ!

「な…っ!?
あんたにボケって言われたくないってーのっ!」

「あ〜…
始まった…;」
あたしと海のケンカは
もはや毎日の日課になっていた。

というより
犬猿の仲と言っていいほど悪いかも…。

クラスの人たちも慣れたのか
毎回お馴染みのケンカに野次馬のように見たり
恒例化してしまった為
普通に過ごす者もいた。

ギャアギャアと
あたしと海が騒いでいると。

ガンッ

「ガッ!?」「!!」



「ガタガタガタガタうっせぇんだよ…っ
ちったぁ静かにしやがれっ!!
このヘタレアイドルっ(怒)」

「だ、だからって背中を蹴るほどか…?」

元ヤンキーの佐原かすみは
通路を挟んだ左隣の海の背中を
容赦なく思いっきり
海の背中を蹴った。

一方
あまりの強すぎる力で蹴られた海は
痛すぎて声が震え
涙が少し出ていた。

「おめぇからケンカふっかけてっからだろーが…」

席について
肘掛け椅子の肘掛けに肘を置いて
ふう、とため息をつく。

「いや…
冒頭のセリフを読んでくれ…
明らかに俺の左隣の女が…」

「あ…?」

「いえ…」

ギロッと思いっきり睨まれて
海はかすみに反抗するのを止めたのだった。

「かすみ…大丈夫?」

「あ…?
まぁな…
大丈夫だって…」

海の左隣から移動して
通路の間にある椅子に座ってかすみの体調を心配する。
そんなゆきなを
気づかってか
かすみは苦笑気味に笑って
ゆきなの頭を撫でる。


(大丈夫ってかすみは言うけど…
あんまり顔色よく無さそう…

車酔いってそんなにキツいんだ…)

さっきまではしゃいでたゆきなは
落ち込んでしまった。

「お前がそんなに
落ち込む必要はねぇよ…」

「え…?」

そう言うのは海だった。

「なんでだよ」

(こんなにかすみが
苦しそうなのに…っ)

言葉が不服だったのか
ゆきなの眉間には
皺が寄っていた。

「なに怒ってんだよ…
かすみは
乗り物酔いが激しいだけで
薬飲めば治るのに
飲まねーから
自業自得なんだよ」

「そ、そうなの…?」

かすみを見ると…。

「…バラすんじゃねぇよ
ヘタレアイドル(怒)」

罰が悪そうな顔で
かすみは海を睨む。

「もー
薬は飲まなきゃダメだよー」

そう言ってゆきなは
かすみの鞄をあさって
薬を出す。

「はいっ」

「う…」

明るく薬を差し出すゆきなとは
対照的にかすみは嫌そうな顔をしていた。

「薬飲まないと
ハイキング楽しめないよ?」

「雨だから
楽しむもクソもねぇんだけどな…」
ちゃちゃを入れるのは
隣りにいる海。

「いいのっ
あたしは
かすみと亜美と一緒にハイキング楽しみたいんだからっ!」

「ゆきな…」

凛とした表情で
ゆきなはかすみ達と一緒に楽しみたいと海に伝える。
それを聞いたかすみは
ゆきなの言葉に
嬉しさを覚えた。

「…仕方ねぇな
ゆきなの可愛さに免じて
飲んでやるかっ」

嬉しそうな笑みを浮かべてかすみは
ゆきなから薬を受け取り一気に飲み干した。


「まぁ…どっちにしろ
ハイキングは荒れるだろーな…」

窓の外の空を見上げて
海はそう呟く。

そんな心配などしないというクラスの賑やかさに海は呆れていた



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