君と出逢ってまた恋をした

□『涙』
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まさかこうなるとは思ってたけど
本当にこうなるとは…

「うわぁ〜Vv
本物のゆきちゃんだー」

「可愛い〜V」

学校生徒が全員
このクラスに押しかけてるんじゃないかってくらい
人がゆきを見に来ていた。

「有名人がそないに珍しいかー?
あたしはゆきなとゆきの双子のが
よっぽど珍しい特集やと思うで?」
「んだな…」

机の菓子に手をつけながら亜美とかすみは言う。

「後々面倒になるんだから
素直に芸能科のある学校に行けば良かったんだよっ!
なのにあんたは呑気に菓子ばっかり食べて!」
「だってゆきだって普通に学校生活したいもんっ」

あたしは前回の屋上の件で聞き出してないことを
たくさん聞き出そうと思っていたが
ゆきは超売れっ子のモデルな為
途中、学校を早退して話しを聞き出せなかった。

「家だって学校だってタダで行ってる訳じゃないんだよ?」
「でも、パパはいいよって言ってたよ?」
「いいよって言ってたじゃなーいっ(怒)」
「ぃ、いひゃああぁいぃっ」

再びゆきの頬を引っ張るあたし。ゆきの安易的な考えが許せなかったからだった。

「まったくっ
父さんは本当にゆきに甘いんだから…」
「あぅ〜っ
あっ、ママも許可出してくれたんだよっ」
「!」

ゆきが母さんを出した瞬間、あたしは一瞬だけ動きを止めた。

「そう…母さんが…」

怒りが一気になくなって
あたしはゆきの頬から手を離した。

(本当…ゆきには
弱いんだからな…
父さんも母さんも…)

ボーっと考えごとに走っていて周りの動きに気がつかなかった。

「おい…なにボーっとしてんだ?」
「へ…?」

声をかけられたのに気づいてあたしはハッとして前を向いた。

「うわぁっ!?///」

すぐ目の前に海の顔があってあたしは椅子ごと後ろへ後ずさった。

(しまったっ
油断してたっ!)

そう我に返って赤くなった顔を冷ます。

「チッ…おしい」
「な、なにがおしいんだっ!」

まだ心音は鳴っているが先ほどよりはだいぶ落ち着いた為
海の言葉に返答した。

「それ、俺に聞いていいわけ?」
「…っ!///」

カァアァッ

囁くような甘い声で
自身の唇をなぞりながら
挑発的な態度を見せる。
その色気に当てられそうになったゆきなは
思わず顔を真っ赤にしてゆきの後ろに隠れた。

「海ちゃん…
ゆきのゆきなちゃんを
いじめないでよねっ」

フンッと鼻息荒く立ち上がるゆきは海を
見上げた。

「いじめじゃねぇよ
可愛がってんだよ」
「意味わからないっ(怒)」

ゆきが海と話している隙にあたしは落ち着きさを取り戻し、
よくよくと考えた。

(あいつがキス魔なこと忘れてたよ…っ
あたしじゃなくて
ゆきにそーいう態度を見せればいいのに…;

いや…ダメダメ
ゆきにそんなことした日には
天誅を食らわせてやるっ!)

「ゆーきなっVv」
「! 良ー
おはよう」

急に後ろから抱きついてきた良にあたしは
自然にそれを受け止めながら会話していた。

(あれ…?
そーいえば…)

「なんで後ろからあたしがゆきなだってわかったの?」

きょとんとしながら
良に聞く。

「え?
普通にわかるもんなんじゃないの?」
「うん、ふっつーに
わかるで」
「うん、普通だ」
「え…?」

(でも…今までは
いつも一緒にいた人ほとんど間違えてたから…)

考えを巡らせていると

「俺らにはゆきなかゆきかの違いなんて
なんら難しいことじゃねぇんだよっ」

ニッと良はいつもの爽やかな笑顔を見せる。

「せやでー
ゆきなはゆきな
ゆきはゆきやからなー」

亜美が得意げに言う

「間違える訳がねぇじゃんなー」

かすみは
呆れたように言う。

それでも

それでもあたしにとって
そんな些細な単純なことが嬉しかった。

「ヘヘ…そっか…」
「―…」

ゆきとは違ったふんわりとした柔らかい表情をゆきなは良の腕の中で見せた。

「ゆきなちゃん
可愛いーVv」
「わっ、ば、バカッ」

急に抱きついてきたゆきに驚きながら
あたしはその嬉しさを隠せなかった。

「たく…ズル過ぎ…」

海の呟きはゆきとゆきなの騒ぎで消えてしまった。



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