君と出逢ってまた恋をした

□『本当はね』
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急に聞こえたゆきの罵声に
あたしと海は屋上の扉を開けた。

そこにいたのは
ゆきと海斗兄だった。












「で…?
状況が全く読めないんだけど…」
「つき合ってんだよ
ゆきと兄貴は」
「えっ!?」

初めての情報にあたしは海を勢いよく見た。

「おや、ゆきな…
迷惑をかけてしまったね」
「海斗兄…?」

海斗兄の目は怒りにも似たような
それでいてどこか冷たい目をしていた。

(つき合ってるのに
なんでそんな目をしてるの…?)

「ひ…っうぅ…」
「…」

キュッとあたしはゆきを抱きしめる。

「なにが理由かわかんないけど…
大好きなあたしの妹を泣かせる奴は
海斗兄でも許さないよ?

面貸しなっ
「「;」」

海、海斗はゆきなの豹変に冷や汗を零す。

「ゆ、ゆきなちゃ…?」
「大丈夫だよ
血祭りまでにはしないから」
「「!?」」

にっこりと微笑むゆきなに
ゆきと海はある人物を思い出した。

(パパ・陸実さんだっ!)

ゆきなのにっこり笑顔はある意味怖かった。

「それは光栄だね…
ボクもぜひ君の
愛のお叱りを受けたいものだ」

不敵に海斗は笑う。

「…海、ゆきを頼むね」
「あ、ああ…」

海にゆきを託して
あたしは海斗兄と
屋上へと向かった。














屋上

「…」

ズーンッ

「相変わらずゆきには
あの態度なんだね…
ご苦労様なことで
海斗兄」
「全くだ…ボクって男はなんでいっつも…」
「後悔するくらいならあんな態度とらなきゃいいじゃん
なんでゆきにあんな冷たい目を向けるの?

ていうかっ
つき合ってるって
どーいうことだっ(怒)」

ケンカどうこうの前に
まずはゆきも海斗兄もあたしになんの報告もないということに
怒っていた。

「いや…
まさかの予想外で
ゆきから告白をされたのだよ…」
「まさかの予想外って…」

それはウソだ

ゆきは小さい頃からずっとずっと
海斗兄だけを見てた。

いつか見た夢の中で
海斗兄にキスをされた夢を見たと言っていた。

それが本当かウソかは
わからなかったけど
ゆきは
それを運命だと信じていた。

幸せそうな顔で…。
海斗兄に冷たい態度を取られながらも
あの子は海斗兄を
好きだと言っていた。

「いつからつき合ってるの?」
「去年のクリスマスくらいからだね…」
「嬉しかった?
ゆきに告白された時」
「もちろんだよ
ボクだってダテに長い間我慢してた訳じゃない…
彼女に…
ゆきに好きだと言われた瞬間
彼女を離したくないと
自分の中に閉じ込めたいと思った…」

これはボクのずっとずっと底に眠る
醜い感情だ。

「売れっ子になればなるほどゆきは
ボクから遠ざかる気がして…
ボクが縛り付けてはいけない気がして…

冷たい目なんて向けなくないに決まっているではないか…

でも、そうしなければ…」

自分の感情を言って

彼女を困らせてしまう気がして

怖くて言えなくなった。

「7つも年上のクセに
よくもそんな
勝手なことが言えるね…」
「ゆきな…?」
「あの子がそんなことわかるわけないじゃない
あの子は誰よりも純粋なの
冷たい態度されれば
自信を無くす…

でも、あの子は
いい子だから…
どんな時だって笑顔なの…

辛い時だって…
苦しい時だって…」

そんなあの子は
あたしにとって
すごく強いと思った。

あたしなんかより
何倍もあの子は
強い女の子だと思った。

「あたし達の年齢はねっ
言ってくんなきゃわかんないことの方が多いんだっ!

ゆきがどんな気持ちで海斗兄の言葉を
待ってるかわかってんのっ!?」
怒りとゆきの気持ちに
あたしは涙を流しながら
海斗兄にキレ出した。

「言ってくんなきゃ
なんにも伝わらないよっ!

ゆきの笑顔がなくなったら
海斗兄のせいだからねっ!?
そんなことしたら
あたしは絶対に許さないっ!

男なら、
女の1人くらい幸せにさせなさいよっ!」
「!」

あの子には本当に幸せになってほしいから

本当は

離れていっちゃうのが
寂しいけど
あたしはゆきとの絆で結ばれてるから
大丈夫…。

だから、
海斗兄の手であの子を
幸せにしてあげて…

「なんでゆきはボクみたいな男を好きになったのだろうね…
ゆきなが男なら
ボクは完璧に白旗状態だ…」
「ぐす…っ
まぁ、あたしが男なら
ゆきを渡さないけどね
あたしの壁を越えてからいきなって
感じだよね」
「ハハハ…
カッコ良すぎ…」

苦笑混じりの笑みで
海斗はいう。

「…それでも、
ゆきは海斗兄を選ぶと思う…
だってゆきは
自由なあなたを好きになったんだから」
「ボクが自由…?」
「うん…」


いつかゆきが言っていた。

『えぇっ!?
かいと兄がすきっ!?
どこがいいの!?』

ゆきが海斗兄を好きだと言い放った時の
あたしは思いっきりびっくりしていた
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