君と出逢ってまた恋をした
□『練習試合』
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「はぅ〜
やっぱり部室前は冷やっこい〜Vv」
部室に台本を取りに行ったゆきなは
体育館下で光が当たらない為か
夏の炎天下には最適の場所だった。
(もうちょっとここに
いようかなー…)
多分、お昼だし
とあたしは思いながら
部室の外に置いてある椅子に座りながら
ゆきなはちょうどいい気温にうとうととし始める。
しかし
「あー…
やべぇ…完璧に道に迷ったぞ;」
「?」
突然聞こえた声に
閉じかけていた目をパチッと開けて声が聞こえた方へ目を向けた。
「「!」」
パチッ
(た、他校の人…だよね?)
服装的に他校のサッカー部の男子だった。
「あ…ちょうどいい所にって…
なんだ…中学生か」
「な…っ!?(怒)」
あたしに声をかけ
喜んだ表情を見せたと思ったが
次の瞬間、他校の男子は
がっくりと肩を大きく落とした。
(今…ち、中学生って(怒)
「だ、誰が中学生だっ!
あたしはここの生徒だっ!」
「はっ!?」
男子校生はあたしの答えに驚いたのか
あたしに近づいてきた。
(なに…?やる気!?)
近寄ってくる男子に身構えながらあたしは
相手から目を離さず見ていた
が
「あ?お前…」
「?」
いきなり指さされたのには嫌な気分になったが
よく見るとどっかで見たことあるような顔だった。
(どこだっけ…)
ゆきなは思い出そうとするが全く思い出せなかった。
「お前ゆきなだろっ!」
「な、なんで知ってる…ん?」
じーっとあたしは相手の顔を見る。
「あっ!悠っ!?」
「ピンポーンっ♪」
小5年まで家が近所ってこともあって
一緒に遊ぶことが多かった悠。
市外に住むことになって
夏休みに入るとともに引っ越して行った。
悲しかったけど連休になると遊びに来てくれて
楽しかった。
けどやっぱり中学生になると時間ややることが増える為か
自然にあたしと悠が会う時間が減っていき
今にいたる。
「いやー…
おっまえ全然変わってねぇなー!!」
「ちょっと…笑顔で言うの止めてくんない?(怒)」
逆に言えば悠は変わっていた。
性格はそのままだが
見た目的に…。
身長なんかあっという間に抜かれてしまい
体格もがっしりとして
他の女の子が見たらきっとファンが一気に増えてしまいそうな感じの
爽やかボーイになっていた。
「ゆきな、目ぇ悪かったんだな」
「そーよ…
漫画の見過ぎで目ぇ悪くなったんだよ;」
眼鏡をはめていたせいで
すぐに気づけなかったと悠は言った。
「ていうか
あんたの方向音痴は相変わらずだな…;」
呆れたような顔で
座っていた椅子から立ち上がる。
「相変わらずってな…;
俺じゃなくてもこの学校は広すぎだっつーのっ!」
「は、ハハハ…」
確かにこの学校は他の学校より倍に行事が多い為、校舎からグラウンド、先生の駐車場までもが広かった。
「つーことでグラウンドまで案内よろしく」
ニッと笑う悠の笑顔は今も昔も変わっていなかった。
(グラウンドっていうことは…)
「ねぇ…悠、
あんたもしかして
「ゆきなっ!」
「「!」」
突然、名前を呼ばれてあたしと悠は声が聞こえた方へと振り向いた。
「か、海っ!」
「はぁ…っ…なに、してんの…?」
この暑い中海は走って来たのだろうか
顔は火照り、汗だくになりながら息を切らしていた。
だが海の表情はどことなく怒っていた。
「あ…いや…その」
(なんで怒ってんのっ!?)
なんにも悪いことをしてないのに海が不機嫌なことにあたしは疑問だった。
「「なぁ…ゆきな」」
「ふぇ…?」
海と悠、おんなじタイミングで声をかけられて
あたしは両方を交互に見る。
「「そいつ誰?」」
「;」
眉間に皺を寄せながら少し怒り気味の海に
好奇心旺盛な笑顔を向ける悠、声のトーンから表情まで真逆の2人に
あたしは冷や汗が出た。
「あ、あの…
あたしの従兄弟で同級生の麻見 海
モデルや俳優やってるんだ」
「どーりでっ!
見たことある顔だと思ったっ」
「どーも…」
「;」
悠の明るいテンションが今の海には似つかわないくらいだった。
「で…こっちが
あたしの幼なじみだった
真中 悠
今は市外に転校して海と同じサッカー部に所属中なんだ」
「悠…?」
名前を聞いた瞬間、海は悠の名前をポツリと小さく呟いた。
「?」
驚いた表情をした海にあたしは不思議に感じた。
「まぁ、同じサッカー部同士よろしくってことでっ」
ニッと爽やかな笑顔で海に笑う悠。
「ああ…よろしく」
どこか浮かない顔をする海。
あたしは変だと思った。
「悠、グラウンドならここ真っすぐ行けば着くから早くお昼食べたら?」
「そだっ!
俺、まだ飯食ってねぇんだっ!
サンキューゆきなっ」
そう言って悠はあたしが指で示した方へと走って行った。
「…なんか怒ってんの?」
チロッと視線だけを海に向けると