君と出逢ってまた恋をした

□『瞳』
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8月下旬

夏休みも終わりに迎える日々を着実に進みつつある今日この頃。

「おいおーい…
お前が落ちてどーすんだよ…」
「わぁってるよ…
けどよー
ゆきなに会いに行こうと思っても仕事ばっかでよー…
つか…やっぱり嫌われちまったかな;」

海の家で残りの宿題を片付けに来た良は
先週のプールの出来事からずっと沈みっぱなしの海に呆れていた。

「俺からしたら
お前の気持ちのが理解出来ねえけどな…
やっぱり役者とかやってると
誰とでもキスって出来るのか?」
「お前…さり気にキツい一言放ったよな…」

さっきから開いている数学の内容など全然頭に入らない海。
親友である良は何故だか海には厳しい。

「…割り切って、ってのはあるかも知んねえ…」
「割り切って…?」
「誰にでもするって訳じゃねぇよ…
ただ、あの時はただゆきなが心配で他に考えが思いつかなかった…
それで解放してくれんならいいや、って思って…

本当に無心でしたものだったから
まさかあんなに怒るとは思わなかったんだよな…」

話していて落ちる海。

「ふ〜ん…でもそれってさ
かすみや亜美が聞いたら
『ふざけんな』って殴られると思うけどな」
「;」
海は良の話しを聞いていやな予感がした。

「お前…もしかして
かなり怒ってる?」
「うん」
「;」

あっさりと肯定する良に俺はやっぱり、と思った。

「過去は過去でお前もまだガキだし
仕方ねぇよなって思うけど
今はそれなりに知恵もついて考え方も変わるもんだと思ってたが
お前はあの頃と全然変わってねぇんだもんなー

普通、ゆきなの気持ち知って他の子とキスするか…?」
「は…?ゆきなの気持ち…?」

良の言葉に俺はポカーンとした。

「うっわ…」
「なんだその顔はっ(怒)」

信じられない、みたいな顔をして良は海を見下すような顔をしていた。
その表情に海はキレる。

「お前って時々、ゆきなを上回るくらいの
鈍の鈍の中の鈍感野郎だよな」
「バカにしてんだろ(怒)」

良がなにを言いたいのかわからないがバカにされてることだけは理解出来る海。
そんな海に良は

「あ〜…もう
俺、なんでコイツの親友なんだろう
そうだ…いっそ放置してみよう
うん、そうしよう」
「お前…久しぶりに俺でからかってんだろ…っ;」

正直、久しぶりに良がこんなにチクチクと俺に攻撃してくるのは馬鹿馬鹿しくて相手にならないときだ
(俺って鈍感だったのか…?

それも極度に鈍いくらいの…)

自分じゃ気づかなかったが俺は良に言われてかなり落ちていた。

「俺はどんな時でもお前の味方だけど
今回は断然ゆきなの味方だから」
「…っ;」

今回だけ、と言い張る良だが
ゆきなと出会ってから良が俺に味方してくれる回数は片手の指で数えれるくらいだった。

(つまり…味方にされないくらい
俺はゆきなにひどいことしてんだな…)

そう言われて俺は改めて
自分の鈍さに気づいた。

「つか…なんであいつあんなに怒ってんだ?」
「は…?」

確かに放っておいた俺が悪いのは確かだが
だからと言って
なんであんなに
怒るか、理由がわからなかった。

「はぁ…神だよ神
海の鈍さは超人超えて神だよ」
「それ、前も聞いたぞ…っ(怒)」

大きく深い溜め息をついて
勉強を放棄して終いにはテレビを付け出した。

(あいつなにしに来たんだ…(怒))

俺は1人虚しく数学に打ち込もうと決意した。

すると

「…なぁ…このCMって…」
「あ?」

なにかを言い出した良に俺は振り返ると
この前、ゆきと撮影したCMのミルクチョコバージョンが流れていた。

今、思ってもあれがゆきなに
見えてしまった俺は
ゆきなに悪いことをした、と思ってしまった。

「…そのCMのゆきのセリフ
本当は違うんだけど
本番撮影時に勝手に変えてさ…
でも、まぁ監督はそっちのがいい…って」
「で?」
「は?

で?ってなんだよ…」
「なんか感じなかったのかよ」
「…」

良に言われて俺はゆきが一瞬、ゆきなに見えたことを伝えようと迷った。

「感じはしたけど…
でも、んなわけないって…」
「…」

そういうとしばらく会話に沈黙が訪れた。

そして

「はぁああぁあぁ〜」


思いっきり落胆する良の溜め息が盛大に俺の部屋に漏れた。

「な、なんだよっ
その溜め息はっ」
「いやもう、神レベルまでに達してる奴に
ド庶民の俺から声をかけていいかわかんねぇから
とりあえず溜め息ついておこうかなって…」
「いらねぇ世話だっつーのっ(怒)」

再び2人の間に沈黙が流れた。
付いていたテレビを消す良。

「でもさ
真面目な話し
海がゆきなを好きなのってなんで…?」
「なんでって…」

そういえば俺はゆきなを好きになったきっかけを誰かに話したことがなかった。

「そう…だな…
俺がゆきなを好きになったのは…
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