NOVELS

□約束8
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※若干暴力表現あり








両方の乳首を捻られ、思わず仰け反った綱吉の首筋に、ザンザスが噛みついた。

「あぁあ……っ!!」

犬歯を突き立てられて、鋭い痛みが襲う。
ぶつっ、と、皮膚の破れる感覚があった。

痛くて堪らないのに、胸を愛撫するザンザスの動きは確実に綱吉の弱いところを責めてきて、綱吉はもう、気持ちいいんだか苦しいんだか分からなくなってきた。

血が滲む綱吉の首筋を、ザンザスの熱い舌がなぞった。
舌先で傷を抉られると、そこがジクジクと痛んだ。

「いっ……たぁ、ザン、ザスッ、まじ、やめ……」

涙で滲んだ視界でザンザスを見下ろすと、ザンザスは綱吉の首筋に顔を埋めたまま、目線だけを上げた。

綱吉の血で唇を濡らしたザンザスは淫靡な空気を纏っていて、綱吉は思わずドキッとしてしまう。

長い舌で自身の唇を舐めるザンザスから目が離せなかった。

鼓動がうるさい。

「…………っ!?」

ふいに、ザンザスの手が、綱吉の下腹部をスラックスごしに触ってきた。
びくっ、と身体が跳ねた。

クッ、とザンザスが笑う。

「……勃ってんじゃねえか、この、変態」
「〜〜〜っっ!!」

ぼっ、と耳まで赤くなった。
その通りだった。
噛まれて舐められて勃つなんて、本当に、自分でも異常だと思う。

耐えられなくて身を起こそうとした綱吉を、ザンザスは腰に腕を回して抱き寄せた。

「や、やめっ、」
「……契約を破るつもりか」

耳元で囁かれ、ピタリと動きを止めた綱吉を、ザンザスがニヤニヤと見上げる。

相変わらず具合は悪そうだが、機嫌はすこぶる良さそうだ。

「っ、ご、ごめん……」

綱吉が謝ると、ザンザスは満足気に笑って、綱吉を拘束していた腕をほどいた。

顎でベッドをしゃくり、「早く服を脱いで寝ろ」、と命令される。

このままではなし崩しに致してしまう。

勇気を振り絞って、綱吉は「待って」、と声を上げた。
途端、不機嫌になったザンザスが睨んできた。

「……あ゙?」

低く凄まれて、綱吉は恐怖よりも、疑問を感じた。

ザンザスは何をこんなに焦っているのだろう。

綱吉はザンザスに向かい合うと、そっと、その頬に触れた。
ザンザスが怪訝な顔をする。

それに構わず、ゆっくり顔を近づけると、綱吉は彼の唇に口づけた。
血の味がするキスだった。

ザンザスが驚きに目を見開く。

ルビーのように輝くザンザスの瞳を見つめながら、綱吉は囁くように話し掛けた。

「…ザンザス、今日は……やめよう?」

傍にしゃがみ、ザンザスを見上げる。

「何焦ってるのかわかんないけど、お前具合悪そうだし。」

ソファに添えられた手を握ると、それはやっぱり熱かった。

「契約とか約束とかじゃなくて……ていうか、そんなもの無くても、俺は逃げないからさ」

ザンザスの視線を、綱吉は正面から受け止めた。

どのくらいそうしていたかは分からなかったけれど、ザンザスの怒気が、ゆっくり萎んでいくのを綱吉は感じていた。

ザンザスは何も言わなかったけれど、ふと綱吉から視線を外すと、天井を仰いで、「は、」と熱い息を吐いた。
そしてそのまま、ソファに凭れて目を閉じた。

それを見て、綱吉はこっそり息を吐いた。

欲を言えば、きちんと寝具に横になって欲しかったが、更にあーだこーだ言って気を変えられてはたまらない。


綱吉はしばらく、ザンザスの整った顔を見つめていた。
射殺すような眼光も、今はなりを潜めている。

10分も経っただろうかという頃、静かな寝息が聞こえてきて、綱吉はようやく肩の力を抜いた。

ふと右手を見ると、いつのまにかザンザスがしっかりと握っている。
ここにいろ、と言われているような気がして、綱吉は苦笑した。

ふぅと息を吐いて、床に座り込んだ。

目を閉じると、意外にも安定した寝息が傍から聞こえてくる。

同じように目を閉じ、ソファに凭れた。

その内、だんだん眠気が襲ってくる。

これでも大組織のボスだ。忙しいんだぞ、と、誰にともなく愚痴る。

「ふぁ……」

あくびが出てきた。
本格的に眠い。

ちょっとだけ、と思いながら目を閉じたはずなのに、次に綱吉が目を開けた時には朝だった。

焦って隣を見ると、大分顔色のよくなったザンザスがスヤスヤと寝ていて、綱吉は自然と笑顔がこぼれた。

何もせずに一緒に夜を明かしたのは、これが初めてだった。




END



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