NOVELS
□恋に恋する男6
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待ち伏せ
「今日は随分遅かったな」
寄りかかっていた電柱からこっちに向かってくる学生服の男を見て、綱吉はため息をついた。
「お前な…毎日毎日、飽きないの」
「好きな相手に会いにくるのに飽きるわけねぇだろ」
「な……」
思わず赤くなる。
真顔でそんなことを言うから、こいつはタチが悪い。
持つぞ、と鞄に向かって差し出された手を避けて、綱吉は早足で歩き出す。
「だ、だから、別にこのくらい、大丈夫だって」
本当はかなり重いのだけれど、嘘をつく。
だって、鞄を持たせるだなんて、恋人みたいじゃないか。
いや、それを言ったら、綱吉だって男なのだし、どちらかというと持ってあげる側だけれど。
「無理すんな、疲れてんだろ」
追い付いてきた彼に、後ろから鞄をひったくられる。
「ちょ、ザンザスッ! 」
「何だ」
返事をしながら、ザンザスはスタスタと歩いていく。
今度はこちらが追う側になった。
「悪いから、いいってば…!! 」
鞄に手を伸ばしたが、綱吉が鞄を掴むより早く、ヒョイと持ち上げられてしまった。
ザンザスとの身長差からいって、そうされると、綱吉ではどうやっても届かない。
「いいからテメェは黙って甘えとけ」
ポスポスと頭を撫でられた。
「……おい、この前も言ったと思うけど、俺は、お前より年上なんだからな」
「たかが2年じゃねぇか」
「そうじゃなくて!! 子供扱いするなって言ってんの」
頭の上からザンザスの手をどける。
「してねぇだろ」
「してるよ」
言い返すと、ザンザスは黙った。
反論するのが面倒くさくなったのかもしれない。
ちょっとイラっときて、そんな自分に、更にむしゃくしゃする。
こいつには、出会ってから振り回されっぱなしだ。
「…綱吉」
名前を呼ばれて、反射的に顔を上げる。
近くにザンザスの顔があった。
驚くより先に、唇に、いつかと同じ温かな感触。
身体が動かない。
振り払うことも出来ない。
意外に整った顔が、目の前にある。
心臓が、ドク、と一つ大きく脈打った。
ザンザスが離れる。
真っ直ぐな目で見つめられると、訳もなく泣き出したくなった。
「好きだ」
「……っ」
「好きな奴を甘やかしたくなるのは、仕方ねぇだろ」
知らない、と言ってやりたかったのに、綱吉の口は、パクパクと無駄な動きを繰り返すだけだった。
ザンザスに背を向ける。
前の時のように逃げ出さないのは、彼に鞄を持たれているからだ、と自分に言い聞かせた。
to be continued...
3ヶ月後くらい。
流されそうになってるツッ君…
じれったく進む二人が好きです。