落第忍者乱太郎/忍たま

□第十ノ巻
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「・・・アリカちゃん?」

「・・・・・・ぁぃ・・・」

人生、何ともなりませんでしたし、

なんにも大丈夫じゃありませんでした。



あの後、出城付近で任務帰りの雑渡さんと遭遇

一緒に出城の門をくぐったあたりで突風が吹きこみ

解いていた髪がなびきに、なびいた

私の少し後ろを歩いていたため

首筋がばっちりと露になり、雑渡さんの目にも触れる

そして今、この状況である。

雑渡さんのお部屋にて、全力土下座なう

圧が怖すぎて頭が上げれません・・!!

「・・・ちなみに、誰につけられたの?」

「い・・・伊作くんであります・・・。」

ごめん伊作くん・・!骨は拾うから!!←

「伊作君ねぇ〜・・・
 彼はまだ大丈夫だと思っていたけど
 読みが甘かったね」

「ま・・まだ??」

なにそれ?

いずれこうなるって、思ってた訳??

「君の弱点は、気を許した相手になると
 極端に無防備になるところだね」

いわゆる顎クイというものをされて

強制的に上を向かせられる

「忍術学園の生徒には特にだ・・
 まぁ教師も例外ではないのだろうね・・。
 普段は気配に敏感で、
 後ろを取られるなんてヘマしないだろうに
 ・・・しっかりと後ろを取られて噛まれたようだね。」

「・・・・返す言葉もこざいません・・」

忍術学園に入った瞬間、気が緩んでいる自覚はある

利吉さんの気配にも気づかなかったし

土井先生とは廊下でぶつかってしまうし。

普段なら気配を察して、よけたりするのだが

あそこだとどうも安心して危機回避能力が低下する

「こまった子猫だねぇ〜」

「んぐっ・・//!?!?」

顎に添えられていた指が数本移動し

私の口に突っ込まれる

「あれほど気を付けろと言っていたのに
 あの時のいい返事は、いったい何だったのかな・・?」

「らっと・・さ・・ッ」

雑渡さんの指が私の舌を引っ張り遊ぶ

「この舌は飾りかい?」

「ぁ・・・やッ・・」

舌をしっぱられ指先で遊ばれる

開いた口から唾液が滴り

顎を伝い畳を汚していく

「そんなによだれを垂らして・・
 これはご褒美ではないのだけれどね。」

だれも、喜んでないっつの・・!

「何度教え込めば、君は理解するのだろうね・・?」

「ンッ・・!!」

舌を強く引っ張られ、雑渡さんのお顔に近づく

「そんな顔をしたって、今日は止めないよ。
 ちゃんと、私の物だと自覚するまではね・・」

「らっ・・と・・さっ・・」

こんな状況では、肯定も否定も

言いたいことすら言えないじゃないか・・!

理不尽過ぎる!!

「ちょっと黙ろうね」

「んっ・・!?」

引っ張られた舌が解放されたかと思えば

入れ替わりに、雑渡さんの舌がねじ込まれた

「ぁ・・んっンッ・・//!?」

「ンッ・・こら、逃げない・・」

「んっンンッ//!!」

後頭部をかっちり抑え込まれて逃げ場がない

荒々しく、私の口内を雑渡さんの舌が暴れまわる

「ンッ・・ぷはっぁ・・!」

「んっ・・」

酸欠ギリギリのところで離された唇

雑渡さんと私の口の間には銀色の糸がつたっていた

「はぁ・・はぁ・・ざっと、さん・・!
 も・・かんべんして、ください・・ッ」

これ以上はいろいろと持たない・・!!

「ちゃんと自分の立場を理解してるのかい?」

「ぁっ・・!」

とんっと押されるがままに畳に倒れこみ

その上に雑渡さんが覆いかぶさってくる

「君がそんなにも無防備だと、私は心配になるよ。
 前にも言ったことだけど、覚えてるかい?
 
 "あまりフラフラしていたら
  閉じ込めてしまうかもしれない"って」

押さえつけられた手首に熱を感じる

雑渡さんが力を込めているのがわかる

どうあがいてもその腕から抜け出すことは不可能だろう

それがなくとも、雑渡さんのギラついた瞳は

私の動きを封じるには十分なものだった。

「・・・そんなの、今の状況と変わらないじゃないですか。」

「どういう事だい・・・?」

「今も、昔も、私はずっと
 雑渡さんの手の中に閉じ込められているから。
 誰かにちょっかい出されたって、
 体を奪われたって、心ばかりは誰の元へと行きませんよ。
 私の心は、雑渡さんという鎖に繋がれてしまっているから。」

もうどこにも行けやしないのだ。

この心は雑渡さんでしか満たされない。

私は心の髄まで、彼に惹かれているから。

誰に好意を向けられたとしても、

私を満足されられるのは、この人だけ・・・。

「私には、あなたしかいないから。」

「・・・良い子だね。」

三日月の様に歪む瞳

楽しそうな声色

私は雑渡混奈門という男に毒されている。

淡い期待など、甘い展開など

彼はさせはしないのだろう。

この奇妙で執着的な関係を彼が望むのなら

私もそれを望もう。

彼から"愛してる"という言葉を聞いた時

何かが終わってしまう。そう感じてしまうほどに

彼から向けられる感情は、とても歪なものの様に感じた

「また、刻んでください・・。
 彼方の印を・・。」

不安になったのなら、

不安にさせてしまったのなら、

目に見える印を残せばいい。

それでこの人が安心するのであれば

なんどでも・・なんどでも・・・

「ぃ・・・ッ」

無言のまま、鎖骨あたりに噛みついてくる

痛いけど・・どこか安心する感覚。

私もきっと、この行為に犯されている

角度を変え、時折激しく、時には甘噛み程度に

なんどもなんども、印を刻み込まれた

「・・・とてもいい眺めだ。」

「・・・満足しましたか?」

いつものように、口元の血を拭う

私を見下ろす形だったので、

雑渡さんの口元から垂れた血が

私の頬に滴り落ちた

「・・・」

すっと親指で私の頬の血を拭う

その瞳は何を思っているのか、

私には到底わかりえなかった

「雑渡さん、満足しましたか?」

もう一度、同じ質問を繰り替えす

「満足だよ。」

私の頬についた血の跡をひと舐めして

また歪に笑うのだった。


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