落第忍者乱太郎/忍たま

□第十一ノ巻
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「もう下がってよいぞ。」

「・・・は。」

何時間たったのだろうか・・

いや、そんなに立っていないのかもしれないが・・

やけに長い時間に感じた・・。

軽く着物を正し、殿の部屋を後にする

私の中に容赦なく出された殿の欲望は

まだ私のお腹に違和感を残している。

殿の一時の気まぐれ相手に私は選ばれてしまったのだろう・・・

その行為が済めば、即座に部屋を追い出された

早く・・早く体を洗いたい・・

ふらつく足取りで、風呂を目指す

まだほんのりと湯気が立ち上る風呂場に逃げ込むように入り

着物を脱ぎ棄てる

「・・・気持ち悪い・・」

お腹にたまった、白い液体を私の中から搔きだす

「っ・・」

妊娠しない体とはいえ、気持ち悪い物は気持ち悪いのだ。

こんなもの、一時だってのこしたくはない・・

「・・・最悪。」

全て搔き出し、体を丁寧に洗い上げる

もういい年のおっさんだ。

さすがに体に跡を付けるようなことはしなかったのが、

不幸中の幸いだ。

けれど、久々だったその行為は

まだ子宮あたりをジクジクと痛めつけていた

「・・・・・」

どんなに体をこすっても、どんなにお湯で清めても

あの不快感はどうにも消えない

「・・・くそっ」

今日は災厄な日だ・・

長湯しても意味がないと思い、そうそうに風呂から上がる

「・・・あれ?」

着物を脱ぎ棄てて入ったはずなのに、その着物はどこにもなく

新しい夜着が置かれていた

「・・・」

あの着物はもう着たくは無かったから、

紛失してもいいのだけれど

この夜着はいったい・・・

「・・・・謝罪のつもり・・・?」

こんなことをするのは、あの人だけだ。

私の今の現状を知るのは、あの人だけ。

ダダダダッ

足音を消すことも忘れて、

音を立てながら目的の人物の部屋の襖を勢いよく開け放った

「雑渡さん・・・」

「・・・・やぁアリカちゃん。」

顔色は何も変わらないのに、どことなく覇気に掛ける

・・・なんか・・・なんか胸糞悪い・・・

「彼方の命令に従って、殿に抱かれてきましたよ。
 ご満足ですか?」

「ご苦労様。」

「・・・・」

なんで、目をそらすの?

なんで、そんな顔するの・・・?

「・・・雑渡混奈門・・!!!!」

勢いに任せて雑渡さんにとびかかり馬乗りになる

いつもなら簡単に避けるだろうに、彼はそうしなかった

「なんて顔してるんですか、組頭のくせに。」

「・・・」

「依然と立場が逆転してますね」

以前私が落ち込んでいた時とはまるで逆だ

「雑渡さん、私言いましたよね?
 彼方のためならなんでもすると。
 彼方のために、あんな屈辱にも耐えたんですよ?
 なのにそれを仕掛けた当人が、なんて顔してるんですか?」

グッと雑渡さんの首に手をかけ、圧力を加える

「気に入りません。
 そんな中途半端な気持ちで私を捧げたのですか?
 私はあなたの物だといったのに、
 彼方は私の物だといったのに
 雑渡さんの思いはあれだけの事でゆらぐのですか?」

首を絞める力を籠めるも彼は微動だにしない

ただ真っ直ぐにこちらを見つめるだけだった

「・・・そんなに申し訳ないと思っているのなら
 上書きしてくださいよ・・・。」

私だって・・・中途半端なんだ・・。

雑渡さんの為とはいえ・・割り切れるようなことじゃない

気持ち悪い・・・あの感触が張り付いて、

このままではどうにかなってしまいそうだ

「嫌なんです・・・あの人の感触が未だにのこっている
 気持ち悪い・・」

あぁ・・泣くつもりなんてなかったのに、

涙はどうしても、とまってはくれそうにない。

「雑渡さん・・お願い・・ッ
 わたし・・っ」

「もういいよアリカちゃん・・
 ごめんね・・」

「ンッ・・!」

グッと雑渡さん体が起き上がったかと思えば、

腰を支えられ、そのまま唇が重なった

さっきのとは違う・・とても優しい・・

「んっ・・・//」

「ンッ」

雑渡さん・・雑渡さん・・

大好きです・・・。
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