蟲師

□壱ノ巻
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とても 気持ちがいい。

木々の揺れる音

頬に当たる太陽の光。

背中に感じる草の騒めき。

鼻を掠める土の匂いも

すべてが新鮮で

私の新たな誕生を祝っているかのようだった。

「・・・ここは・・・どこ・・・?」

意識の浮上とともに、目を開ければ

眼前に広がるは 濃い緑。

風の揺らめきが木々を揺らし

私の目覚めを祝福する。

「ぇーっと・・」

ゆっくりと体を起こし、状況を確認する。

どこか実家の裏の森に似たような雰囲気を感じながら

あたりを見渡してみるが

見渡す限り、木々ばかりで

方向感覚するら危うい事態だった。

「なんで、こんなところに・・。」

地元の夏祭りに遊びに出かけ

そのまま友人と肝試しに繰り出した。

地元でも有名な洞窟があり

そこを通り抜ければ、生まれ変われるとかなんとか・・

所謂、胎内巡りというやつを

することが出来る場所があった。

そこを一人ずつ抜けて、それから・・

「あれ?
 わたし、アレからどうしたんだろう・・・?」

確か私が一番最後で

一人懐中電灯片手に洞窟を潜り・・

そこから先の記憶が一切なくなっていた。

洞窟内に入ってからの次の記憶は

目覚めた今に、繋がっていた。

「・・帰らなきゃ・・。」

何がどうなったのかは分からないが

今できることは、人がいる街に戻ること。

そうすれば電話も出来るし

助けを呼ぶこともできる。

そう思い、重い腰を上げ

険しい森の中を突き進むことにした。



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