蟲師

□弐ノ巻
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腕時計なんてものが存在しないこの時代では

時間の感覚があやふやで

一日が長く感じる時すらある。

「ふぅ〜・・」

大きな木陰にそっと腰を下ろし

休息をとる。

旅を続けて半年、

ギンコと離れて約一年の歳月が立っていた。

蟲の騒めきや、人の噂を頼りに方々探し回るが

彼の居所を掴むことは出来なかった。

そんな時だった。

「一夜橋・・?」

男「なんでも先日、あそこの谷に
 一夜だけの橋がかかったそうな・・。
 その後、跡形もなく消えたって話だなぁ〜・・」

同じ旅人であろう男が

面白い話があると聞かせたのは

そんな話だった。

一夜橋には聞き覚えがあった。

蟲が作り出す現象の一つだが

私の過去の記憶と照らし合わせれば

そこにギンコが居た事さえも思い出してきた。

「とても面白い話をありがとう・・。
 参考になったよ。」

男の話に礼を言い、

ギンコが向かったであろう方角に足を向ける

男「達者でなぁ〜」

男に軽く会釈を贈り

歩き出した。

「もうすぐ、
 会えそうな気がします・・ギンコ・・・。」



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