蟲師

□肆ノ巻
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私の腹の傷も回復した頃

二人で気ままな旅を続けていた。

蟲を祓い、蟲を助け

蟲と共に旅を続ける。

この何気ない毎日がとても楽しく

私の世界を色づけた。

ギ「アリカ、
 そこの茶屋で一休みするか。」

「えぇ、それもいいですね。」

しばらく歩いた足は、

少し疲れを見せていたため

二人で荷物を置き、

お茶と一つの団子を頼んだ。

「しかし、随分と方々巡りましたが
 世界は広いですね・・。」

目の端に浮遊する蟲を愛でながら

空を見上げた

ギ「そうだな・・。
 どこまで行っても世界は広がってる。
 一つとして、同じ所はない」

「こうして、まだ私を
 お側においてくださって・・
 感謝しています、ギンコ・・。」

そう言って小さく微笑めば

ギンコも笑みを返してくれた

ギ「んなつまんねーこと言ってんなよ。
 俺は、お前の世界そのもの。なんだろう?」

ギンコはくしゃりと私の頭を撫でながら

昔の私の言葉を呟いて見せた。

「ふふっ・・えぇ・・。
 それは今も昔も変わりなく・・。
 今も昔も、貴方は私の世界そのものです。」

ギ「・・・馬鹿正直に言われると・・、
 なんか・・照れるな」

ギンコはばっと顔を背け、頬を掻いた

「何事も言わなければ
 伝わらないものですからね・・。」

お茶を一口すすりながら

一息つく。

そんなことを言いながらも

肝心な言葉は、

今も尚

言えないままなのだが。

ギ「・・それも、そうだな・・。」

ギンコも私同様お茶をすすりながら

何処か遠くの方を見つめた。

今彼が何を思っているのか

私には想像など、つきはしなかった。




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