蟲師

□玖ノ巻
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街道を抜け、山を越え、谷を越え

ようやく見渡すは水平線。

潮の香りが、懐かしくも鼻を掠める

「久々ですねぇ化野先生と会うのは・・」

ギ「あぁ・・。
 随分時間を喰っちまったからなぁ
 アイツ機嫌が悪いぞ。」

ただでさえここに戻ってくるものも大変で

それに加え蟲たちに足止めを食らっていたため

文を貰ってから随分と時間が経ってしまっていた。

「緊急ではなかったんでしょう?
 なら大丈夫ですよ。」

面倒そうにするギンコの背を押して

二人で化野の家へと歩を進めた。

「化野せんせーい!ただいま戻りましたー!」

戸を開け屋敷内に声を掛ければ

奥の方からドタドタと足音が近づいてきた

化「お・・・そーい!!!」

化野の形相を見て

ギンコはそれ見た事かとジト目で見やった

「あははは;;
 遅くなり、申し訳ありません・・」

化「ぃ、いやっアリカ、
 お前さんを責めてるわけじゃ・・っ!
 ギンコっお前なぁ・・!返事くらい返せ!」

行き場のなくなった怒りは

私の隣でめんどくさそうに

顔をしかめるギンコに向いた様だった。

ギ「返信することがなかったもんでな。
 よったんだからいいだろう?」

開き直るギンコの態度に顔をしかめながらも

気持ちを切り替えるように咳ばらいをした。

化「まぁいい。
 ちょっとお前さんに
 見てもらいたいものがあったんだ。
 さっそく、いいか?」

ギ「まーた変なもん買ったのか?」

ギンコは蟲煙草を咥えながら

呆れたように声を漏らした。

化野の収集癖は、未だ健在のようだ。

化「今回は買ったんじゃなくて
 譲り受けたんだ!
 どうも曰く付きの骨董らしい。」

ギ「んなもんホイホイ貰うんじゃねーよ・・
 めんどくせぇなぁ、」

買っていようと譲り受けようと

こっちからしてみれば同じことで

ギンコも面倒そうに顔をしかめた。

化野先生は妙な引きがあって

大概は本当に曰く付きだったりするので

厄介なのだ。



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