Fantasy Novel

□次境憚外伝ー恋夜抄ー第1話
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それはあったかもしれないもう一つの物語




彼が目覚めた場所は背高く伸びた竹林の中だった。
『んぅ・ ・・、』
『こ、ここは・・・・?』彼は目を擦りながら辺りを見回した。
『・・・何も無い・・かな?』
辺りは竹しか生えていない、竹の先には竹、その先も竹。
いつまでもその風景だ。
『あ・・・れ?』
彼は疑問を抱いた。
『僕は誰で、ここは一体・・・・“どこ”?』
彼は倒れていた時に何らかの原因で記憶がショートしていた。
『な・・・、名前・・は』彼は自問自答して名前を思い出そうとした。
『・・・“桜”・・・、“桜楼”・・・、“桜楼光夜”(おうろう・こうや)・・・それが僕の名前。』
『うん・・・・でも何故ここで眠ってたんだろう?』光夜が考えていると。
『うーん、この辺から感じるんだけど・・・・。』
どこからか人の声が聞こえた。
『・・・!?人の声!?』その時急に上から人?が跳んで来た。
『んっ・・・、っと。』
『なっ!?』
光夜が驚いた声を上げると目の前に降り立った兎の耳を生やした人がこちらを見た。
『へ?』
『あっ!貴方がこの“妖気”の主?』
『え、妖気?』
彼女の言葉は良くわからなかった。
『ん〜、妖怪か・・・。』『人間ならすぐに追い出したりするけど妖怪しかもかなりの力を持ってるみたいだし・・・・。』
『・・・・?』
光夜は冷静に考えた
(頭に兎の耳が生えてる、凄い・・・不思議だ)
『えっと、ケガとか無いですか?』
急に彼女が聞いて来たのでここは冷静に話して見た。『は、はい。けど何故ここに居るのかここが何処なのか良く分から無くて。』
『記憶喪失ですか?』
彼女がそう言うと少し考えたのち。


『あの、良ければ近くに家があるので休まれてはどうですか?』
彼女は竹林の向こうを指して言った。
『え?良いんですか?』
『ええ、良いと思いますよ、それに記憶喪失なら私の師匠が医者ですから診てもらえると。』
光夜にとってそれはありがたい話しだった。
『ありがとうございます!』
『えっと、僕は桜楼光夜と言います、あなたは?』
光夜は彼女に名を聞いた。『私は鈴仙・優曇華院・イナバと言います。』
『そうですか、じゃあ改めてありがとうございます。鈴仙さん。』
『いえ、妖怪どうしですからお気にせず。』
『じゃあ行きましょうか“永遠亭”へ』



少年移動中・・・・



『うわぁ、大きい・・・』光夜の前に現れたのはとても大きい和風の家だった。『それじゃ、中に入りましょうか。』
鈴仙はそう言うと門を開け光夜を入ってと促した。
『中もすごく広い・・・』光夜は驚いてばかりだった。
鈴仙はそんな光夜を見て少し笑っていた。
『ただいま帰りましたー。』
鈴仙か扉を開けると
『お帰りそれでうどんげ、その子が?』
一人の女性が立っていた。『はい、師匠。』
鈴仙がそう言うと師匠と呼ばれた女性が光夜を見て言った。
『この子がねぇ〜。』
『えっ、えっと・・・。』正直ジロジロ見られて恥ずかしい。
光夜がそんな事を考えてるいると。
『あっ師匠、実はこの人を診てあげて欲しいんですが。』
鈴仙がそう言った。
『別にケガはしてない見たいだけど?』
『はい、外傷は無いみたいで。でも記憶喪失みたいでして。』
『記憶喪失ね〜、』
師匠と呼ばれた女性はもう一度光夜を見て
『良いわ、こっちに来て。』
光夜を中に招いた。



少年移動中・・・・



『さて、まずは名前ね。貴方名前は?』
女性は光夜を診療室に連れてきて名前を聞いて来た。『お、桜楼光夜です。』
『そう、私は八意永琳よ。』
永琳は軽く自己紹介を済ませた
『うどんげ、』
『あっはい、何ですか師匠。』
『貴方はちょっとコレを取って来て頂戴。』
そう言うと永琳は鈴仙(うどんげ)に紙を手渡した。『わかりました、じゃあ行ってきます。』
鈴仙はそう言うと部屋を去った。
『さて、』
永琳は光夜を見て
『じゃあ検査を始めましょうか。』
『は、はい。』



少年検査中・・・・



『ん〜これは恐らく{なんらかのショックによる記憶混乱}ね。』
永琳はカルテを見ながらそう言った。
『記憶混乱ですか?』
『そうよ、恐らく貴方はなんらかのショックで一時的に記憶が混乱してるだけですぐに記憶は回復する筈よ。』
『良かった・・・・。』
光夜は安心したがまだ話は続いた。
『でも、一つ気になる点があるわ。』
『気になる点・・・ですか?』
『ええ、そうよ。』
永琳は少し話辛そうに話始めた。
『貴方を検査してて気づいたのだけど、貴方はもしかすると“ここ幻想卿”の妖怪では無いかもしれないわね。』
『え?どういう・・・。』光夜は永琳に聞き返した。『貴方は今まで私が診てきた妖怪とは色々違うのよ。』
『詳しくは貴方に言っても意味が分からないだろうけど。』
『そう・・なんですか。』光夜はますます自分の事を知りたくなった。
『でも、』
『それは本当は有り得ない事なの。』
永琳はそう言った。
『え?どうしてですか?』光夜は尋ねた。
『この幻想卿には外の世界との行き来を塞ぐ結界があるの。』
『だからよほどの事が無い限り外の世界からこちらに来る事は出来ない筈よ。』光夜はその話を不思議に思った。
『でも、僕はここに居ますよ?』
永琳はやれやれと言った感じに話した
『そうよね・・・、まぁ来てしまったものはしょうがないんじゃない?』
『そう・・・ですか。』
『まぁ今日の所は家に泊まって行きなさい。』
『行く当てすらないんでしょうし。』
『あっ、はいじゃあお言葉に甘えて、』
{コンコン、ガラ}
『師匠、頼まれた物を持ってきました。』
鈴仙が扉を開け入って来た。
永琳は鈴仙を見て
『良いとこに来たわね、うどんげ。』
と、言った。
『え?どうかしましたか師匠?』
鈴仙は不思議そうに永琳を見た
『うどんげ、今日この子を家に泊めるから部屋に連れて行ってあげて。』
鈴仙はそう言われると、
『そうですか、分かりました。』
と、答えた。
『よろしくお願いします。』
光夜は鈴仙にそう言った。『この屋敷は広いけど私とうどんげとてゐと姫しか住んでないから』
『あ、ちなみにてゐは家の使用人みたいなものようどんげと同じで、あと姫と言うのは“ここ”永遠亭の姫名を“蓬莱山輝夜”と言うわ。』
永琳が詳しく説明してくれた
『そうなんですか。』
『じゃあ今日はもう時間が遅いから部屋に行きなさい。』
永琳がそう言うと光夜は、『お言葉に甘えさせて頂きます。』
と頭を下げた。
『じゃあうどんげ、この子を部屋まで案内してあげて。』
『はい、じゃあこっちです。』
鈴仙は光夜を連れ部屋の外に出た。
二人が部屋を出た後、永琳が光夜のカルテを見ながら呟いた。
『・・・、まさか・・あの妖怪の仕業かしら?』

部屋を出た二人は廊下を歩いていた。
『あの、鈴仙さん。』
『はい、どうかしました?』
『実は聞きたい事が。』
光夜は鈴仙に一つ聞きたい(気になる事)を聞いた。
『へ、部屋を出た辺りからついて来てる子はお知り合いですか?』
『え?』
鈴仙が辺りを見回してみると柱の影からていが出て来た。
『凄い、凄い私に気づくなんて。』
ていは笑みを浮かべながらそう言った。
『え、あ、どうも。』
光夜は軽く礼をした。
『てゐ、何してるのよ?』鈴仙はてゐに呆れつつ言った。
『いや〜、鈴仙が何か拾って来たって聞いたからどんなヤツかな〜って。』
『あ〜、そうだったの。』鈴仙はやれやれと言った感じに話を続けた。
『桜楼さん、この子はさっき師匠が言って・・・』
鈴仙の言葉を遮ってていが喋った。
『私は因幡てゐ、よろしく。え〜と?』
ていが名前を尋ねる様に見てきたので
『あっ、桜楼光夜です。』光夜はすぐに答えた。
『変な名前まぁ良いや、よろしく光夜。』
『こら、てゐ!いきなり馴れ馴れしいでしょう。』
『全然良いですよ、僕は』光夜がそういうと鈴仙は『そうですか。』と言った。『まぁ良いわ、てゐ。』
『何?』
『この人は今日ここに泊まるけど余り悪戯とかしちゃだめだからね?』
『言われなくても分かってる、じゃあ私はこれで。』てゐはそう言うと永遠亭の奥に消えて行った。
『すみません、騒がしくて。』
『いえ、良いじゃないですか。』
『僕は騒がしくて楽しいのが好きですし。』
『そうですか、なら良いんですけど。』
二人が話している間に空き部屋の前に着いた。
『あっ、ここが空き部屋です。』
鈴仙は障子を開けた。
中には六畳程の和室があった。
『布団はすぐに持って来ますからちょっと待っててください。』
鈴仙はそういうと布団を取りに行った。
光夜は部屋に入り待つことにした。
『・・・、和室か。』
光夜はそういうと後ろから声が聞こえた。
『和室がどうかしたのかしら?』
光夜が声にビックリして振り返ると障子の前に永琳が立っていた。
『わっ、永琳さん!ど、どうかしましたか?』
『いいえ、ただ前を通り掛かって。』
『そうでしたか。』
『あっそうです、部屋を貸して頂きありがとうございます。』
永琳は光夜の方を見ながら言った。
『気にしないで。あっそうそう、トイレは右を真っ直ぐ行って左に曲がった所にあるから。』
『はい、わかりました。』光夜と永琳が話していると鈴仙が戻ってきた。
『あれ?師匠どうかしたんですか?』
『いえ、通り掛かったからついでに来てみたのよ。』『そうですか。』
鈴仙はそういうと部屋に布団を引き出した。
『あっ!それくらい自分でっ。』
『ダメですよ、お客さんにやらせる訳には。』
鈴仙はそういうとテキパキと布団を引き終わった。
『鈴仙。』
『何ですか、師匠?』
『話しがあるから私の部屋までついて来てちょうだい。』
『はい、わかりました。』二人が部屋を出ようとしたとき、急に永琳が光夜の方を振り向き。
『良い夢を。』
と言った、それに続いて鈴仙も、
『おやすみなさい。』
と言った。
『はい、色々ありがとうございました。』
光夜は感謝の意を込めて、『おやすみなさい、お二方良い夢をお見になってください。』
と答えた。
鈴仙が扉を閉めると光夜は布団に入り今日あった事を整理しはじめた。
(記憶喪失に幻想卿に別世界・・・・か。)
(僕は一体どこから来てどこに帰るべきなんだろう。)
光夜はそのような事を考えながら布団に入っていた。


ーーーーー少年苦悩中


永琳は鈴仙と二人で話していた。
『うどんげ、明日あの子に幻想卿について色々教えてあげてくれないかしら。』『別に構いませんが?』
『あと、もちろんあの子の分も朝ごはん用意してあげて、なるべく食べやすい物でね。』
鈴仙は永琳の話をメモしながら聞いていた。
『まぁ、これくらいかしら。』
『じゃあ私はこれから新薬の実験だから。』
そういうと鈴仙と永琳は部屋を出て永琳はどこかえ行った。
『おやすみ、うどんげ。』『おやすみさい、師匠。』そうして時間は深夜へ。
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