貰い物小説

□咲き誇る梅の花の下で
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その日から今日までの5日間、土方さんがビックリする程俺は仕事を頑張った。

皆が嫌がる早朝見回りだって自ら買って出たし、百を越える始末書だって書き上げた。

それもこれも、今日、神楽とゆっくり花見をしたいから。

今日という日をあんなにも楽しみにしていた神楽だから、仕事をサボって、なんかじゃなく、きちんと休みを取って二人でのんびりしたかったのだ。

俺の頑張りが認められたか、土方さんは文句の一つも言わずに今日を非番にしてくれた。今日だけは土方さんに感謝する。

約束の時間までは、まだ時間がある。何度も何度も時計を確認して、鏡だって呆れるくらい見た。

やけにソワソワしてしまって、準備も万端な事だし、と出掛ける準備をする。ここから万事屋まで、10分もあれば着くだろうに、30分も前に屯所を出てしまったのは……

花が咲いたようなあの笑顔を、早く見たいから。



思わず笑顔になってしまう程青い空の下を歩き、万事屋を目指す。早く会いたいからか、どうしても早足になってしまう自分は、相当神楽に惚れているみたいだ。

万事屋に着き、呼び鈴を鳴らすと、数分と置かずに神楽が顔を出した。

「待った?」

「待ちくたびれたネ」

「はは、悪ィ悪ィ」

待ちくたびれた、なんて言う割に笑顔の神楽の手を引いて、歩き出す。

向かうは当然、あの公園。



10分程歩いて着いた先の公園は、見事に人で溢れ返っていた。

皆、考える事は同じなのか、デジカメ片手に梅の樹の下に娘を立たせる母親や、昼間っからイチャつくカップルなんかが大勢いる。

もともと人込みが苦手なのもあるが、昼間っから人前でキスをするカップルなんか視界に入れたくはない。

そんな理由から、人込みから少し離れた所にレジャーシートを敷いた。

「ネ、私、お弁当作って来たアルヨ!」

シートに腰を下ろした途端、神楽は重箱を広げ始めた。

中にはタコさんウインナーや卵焼き、サンドイッチなどが詰められており、彩りも鮮やかで食欲をそそる。

「へぇ、なかなか上手に出来てんじゃねーかィ」

「新八に教わりながら作ったネ!」

不意に出て来た新八くんの名前を若干邪魔に思ってしまうのは、俺の我が儘か?

口に出してしまえばきっと、神楽を困らせる事になると分かっているから、黙っておくけれど。

「じゃ、ちょっと俺そこの自販機で飲み物買って来まさァ。お茶で良いかィ?」

「うん、よろしくアルヨー」

財布を握りしめ、自販機へ向かう。自分の分の水と神楽に頼まれたお茶を購入し、急いでシートを敷いた場所へ戻る。

と、そこには。
見慣れぬ男が座っていた。
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