文章
□銀八先生のひっそりとした片思い
1ページ/1ページ
3年間、お前を見てきて先生はやっぱり想います
先生はお前が好きだ
高校3年間は全部、銀ちゃんと一緒だね。みんなより銀ちゃんとの思い出のほうが多いかも
3年生に上がった新学期にお前はにこにこ笑ってそう言ったのを覚えてますか。イケメン先生との思い出たっぷりで嬉しいだろ、天パ先生は頭の中も弾けてるね、オール1希望者がいるなぁ、ごめんなさいイケメン先生。くだらない会話をする内心で、もしやこれは自惚れてもいいのかも。もしやこれは運命かもだなんて乙女チックな先生が居たことに、お前は気づかずにいてくれましたか
毎日毎日、戦争みたいな教室の中でどうしようもない生徒達の中に混じって笑い転げるお前を見て、先生はどうしようもないくらい生まれ溢れる気持ちを身体の中に留めるのに必死でした
当然のようにお前の隣で、当然のようにお前に触れることのできる土方達に年甲斐もなく嫉妬もしました。でもお前が俺に気づいて俺の名前を呼んでくれたらそんな気持ちは一瞬にして吹き飛んで、あとはただ、にやける頬を隠すのに必死だったりもしました
お前が遅刻してしかも授業中にも関わらず、勢いよく教室の扉を開けてズカズカと入ってきたあの日の気持ちは何があっても忘れられないでしょう
寝ていたはずの高杉も、いつものごとく喧嘩していたキャサリンや土方や沖田や志村、神楽たちも俺も、クラス中の全員が一瞬のうちに静まりかえり、そして、唖然としてお前を見つめて固まってしまいました。お前が、だってあのお前が大粒の涙をぼろぼろとその瞳から零していたから
笑顔に揺らされることしか知らないと思っていたお前の瞳が、悲しいと言って、苦しいと言って揺れるのです。ふられた。一言、声にならない声を落として、お前は今が授業中で他のクラスは静かに勉強してるということすら忘れて大声で泣いていましたね。止まらない涙と泣き声。みんなお前の周りに集まり、頭を撫でたりなだめたり、とにかく泣き止んでもらいたくて一生懸命でした。本当はあの時、お前をこの手で引き寄せてこの胸に包んでしまいたかった。俺が居るから、だから泣くなと言いたかった
お前を好きだと、
そんなことをしても許されるお前たちの青春時代の中に、俺は居られなかった。そんなことができるほどのがむしゃらさは、俺にはもう無かった。輪の中に入りそびれた俺は、その涙が早く消えて無くなることを心の中でそっと願うだけでした
教師になれたからお前と出逢えた。教師でいるからお前と繋がれた
けれど、教師になれたからお前が遠い。教師でいるからお前とは結ばれない
冬晴れにはならなかった生憎の天気。雪こそ降らないものの、どんよりと重たい灰色が広がる空はまるで先生の心を映しているようです
最後まで賑やかなこの教室には涙なんか無く、あるのは昨日までと変わらない笑い声や叫び声。まるで明日からも続いていくような錯覚を起こさせる。また明日も変わらずお前が俺のもとへと駆け寄ってくる、そんな錯覚が
でも現実は違っていて、次にこの教室が賑わう時にはお前は居なくて。きっとまたどうしようもない、けれど一生懸命に毎日を生きるお前の後輩達が居る。お前が座っていた椅子も机も、ふざけて落書きしていた黒板も、騒いでぶつけて傷つけた壁も、全部そのまま残していくのにお前だけが居ない
それがこんなに寂しいのにそれでもここに居ることをやめない先生もたいがいバカだと思います
銀ちゃんはさ、先生がぴったりだよ。先生になれてよかったね
ふいに、自分のことのように嬉しそうに言ったその言葉が、笑顔が、俺をどれほど喜ばせてくれたかお前は分からないでしょう
俺にも描く未来があったように、お前にも描く未来がある。俺がさんざん我慢する分よりたくさん、お前はお前の夢を叶えてほしい。そしてたまに、ほんの少しでいいから俺を思い出して俺の居ない日々を寂しがってくれたなら
銀ちゃん今日までありがとー!大好きだよー!
おー俺もだー
もしもいつか、この先、また、お前と出逢うことができたら。そのときは、
ひとひら舞い落つ雪のように
(いまは人知れず溶けていく想いだけれど)(花びらのように)(形に成る日がいつか)(訪れますように)
ーーーーー
前サイトリメイク(^ω^)
.