文章
□人間に恋した風間千景
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※天霧視点
風間の様子がおかしい事はとうに気付いていました
風間が興味を抱くものは少なく、女鬼との子を儲けようとしているのも種の存続の為であり頭領の地位からくる謂わば責務にすぎません。そのため女鬼自身には何の関心も無く、場合によっては子が成した後に、ふとした気まぐれで斬り捨ててしまっても不思議ではない
しかし裏を反せば、ひとたび興味を示したものには異様なまでの執心をみせるのです
島原で彼女に出逢ったのは偶然か否かは今となってはどうでもいい事。引き返すことなど出来ません、ふたりは視線を交錯させてしまったのですから。彼女は勿論ただの人間ではありますが容姿の美しさは鬼のそれに引け劣らず、風間の隣に置かれればいっそうに輝きは増していくのです
風間は彼女を一度も抱くことはありませんでした。それが踏み込んではならぬ一線であると自身を抑制させるが故の行動なのか、人間の女を抱くなど彼の矜持に触れるからなのか、あるいは全く別の、例えば本能が純粋にそうさせているのか。真意を計ることは出来ませんでしたが風間は彼女を傍に置き何もせず、時折、頬へと指を滑らすのです
彼女に会う際に私と不知火を部屋に置かなくなったのは、いよいよ風間の内に芽吹いた感情が大きく育ったからなのでしょう。しかし風間自身がいちばん、自身の感情の意味を知らず、けれど確実に実っているそれの答えを得られず掻き乱されていました。ですが答えを得る瞬間は呆気なく訪れます、そうそれも自身の行動が故に
「風間、今夜予定されていた会合は新選組を警戒してとの事で急遽取り止めになりました」
「フン、くだらんな。田舎侍の群れごときに何を警戒するのやら」
「して、今夜は?」
「貴様に言う必要があったか?」
「出るのであれば場所を」
「二度は言わん」
「新選組が警戒を強めているのは我々に対してです」
「この俺が田舎侍に劣ると言いたいか」
「…ここ最近、島原にも新選組の偵察が入っているようです」
「……」
雪村千鶴に妻になれと風間自身の口から零れた時、その事実をいちばん拒絶したのは新選組の面々でも雪村千鶴でもない、当事者である風間千景でした
内に広がる疑問は外に吐き出された瞬間に答えとなり風間に現実を知らせました。殺気で張り詰めていたその場に、もうひとつの底冷えする空気がひっそりと生まれた事に気付いたのは私と不知火だけでしょう
あの日から数日が経ったある晩に風間は島原へ行きました。彼女に会い何を感じたのかは判りませんがそれ以降、島原へは足を運んでいません
「風間、私達は風間の望む通りに動きましょう」
「当然だ」
「風間の望みを聞かせてください」
風間がひとつ望めばそれが何をもたらすか。先見するに難くない事です。しかしそれでも、望んではくれまいかと私はどこかで期待している。奔放に見せ掛け実は多くに縛られ続けてきた貴方が初めて自分で見つけたそれを望むことに期待している
「…愚問だな」
「……」
ただ一度だけ、たったひとつの、万人が当然に求める私欲さえもどうして叶わないのか。かつてない程に執心したそれを、なぜ自ら捨てねばならないのか
誰もが無条件でひれ伏してしまいたくなる地を這うような声に抉られ、穴を開けたのは私の心だけではないのでしょう
「今宵こそ我が妻を忌々しい人間共から引き剥がす」
私が鬼という存在を嘆き、人間を心底羨んだのは。後にも先にもこの時だけなのです
世界の終わりを焦がれる人
(初めての接吻)(それが終幕の合図だと)(知るのはこの世でただ二人)
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天霧は忠誠心が為に自分から風間に何か言う事はなくて、言ってもらいたかってゆう
一応、風間とヒロインは両想い的な…
(^ω^)わかりにくいね
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