文章2

□うちはイタチに手紙を書く
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拝啓 うちはイタチ様

貴方がこの手紙を読んでるでいる頃、私はすでに……
などと常套句から始めてみましたが、いまいち格好がつかない気がしたのでやっぱり止めます。そもそもこの手紙を貴方が読むかどうかの確信が私にはいまいち持てません。貴方は意志の強い人ですから、今日までの人生へ決別の意味も込めてこの手紙は読まずに燃やすのではないかとも思うからです。なので、読んでくれていたらラッキー、燃やされていたらまあ仕方がない、くらいの心持ちで書かせて頂きます。余談ですが、どうして文をしたためる時は敬語になってしまうのでしょうね。私と貴方の関係にかしこまった態度など必要無いと言うのに。不思議なものです。しかしこのほうが私と貴方の想いも凛として美しくなるような気がするのです。とは言え、いざ便せんを前にすると何を書けばよいのか悩んでしまいます。思い出をつらつら書く気も起きませんし、私の性格上、伝えたいことはそのつど声に出していましたから今更私の心の内を書くまでもないかなとも思います。そうすると書くことが無いな、と頭を悩ませているのが現状です。慣れない事をするものではないですね。けれどどうしても貴方へ手紙を残したかったのです。

イタチ、貴方が苦しみもがき、悩み考え抜いた末に出した答えを私は受け止めたいのです。私は同期の中では優秀な方でありましたが、貴方に比べると霞む程度でしょう。ですから私が貴方の置かれている立場をいくら理解しようとしても、それはとても難しい。けれど、うちはイタチと言うひとりの男を想えば、いとも簡単にわかってしまうのです。大切な故郷の為に、そしてなにより、貴方はきっと誰かの為に行動しているのでしょう。まだとても弱く、けれど輝きに満ちている誰かの未来のために行動しているのでしょう。心根の優しい貴方はいつも自分以外の誰かのために心を砕いていたことを私は知っています。そんな貴方が選んだ道を、邪魔したくありません。数多くを捨てなければたったひとつでさえ守りきれぬと言うのならば、それで良いのでしょう。

そして私は、私なりに貴方を守ります。貴方がこの手紙を読むか否かは断定出来ませんが、貴方が此処へ来ると言うことは強く確信しています。それは、自惚れではなくて、うちはイタチと言う男が私と言う女をそれほどまでに想ってくれていると理解しているからです。貴方が此処へ来る頃、私は長期任務に駆りだされています。その任務において私は死ぬでしょう。木の葉の忍として生きる以上、貴方のように里の役に立って死にたい。けれど実際は貴方が私を手にかける瞬間の貴方の顔を見たくないだけかもしれません。私がうちは一族ではないゆえに、貴方には要らぬ悩みを抱えさせてしまったことかと思いますが、貴方が私を想ってくれるように私もまた貴方を想っています。自分のことは後回しにしてばかりいる貴方ですから、これから先は茨の道を進むと容易に想像出来ます。けれど、どうか忘れないで。最初から最後までイタチを想い続けていた人間が居たことを。自ら手にかけなければならないほど心を預けてくれたことを、私も忘れません。

貴方の描く未来の詳細を図ることは出来ませんが、信じています。


追伸
これでも、ひと言の相談もなかったことに少し腹が立っているので、しばらくは顔も見たくありません。









兄の懐に忍んでいたボロボロの手紙を読んだサスケは、兄の隣にはいつもひとりの女が居たことを思い出した。自身にも優しかったあの人を、今ようやく思い出した。穏やかに目を閉じる兄を見る。その優しげな表情は、もう遠くなったあの頃によく見ていた兄だった。震える手で、涙に濡れぬよう気を配りながら手紙を畳む。そうしてもう一度兄の懐へしまった。すべてから開放された兄がこれから、あの人のもとへ無事に辿り着けるように願いながら。死の一番最期、兄が呟いた言葉は否定しよう
「呆れた顔したあとに、笑ってアンタの手を取るぜ」
そう言えばあの人は、そういう人だった



























きみの為だけに動く心臓が欲しいよ



(早すぎると言って、顔を合わせてくれないかもしれないなぁ)















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イタチ格好いい
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