D.Grayman

□「独占欲」  
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 ぐったり横たわっている身体に、再度唇を重ねる。荒々しいものではく、触れるだけの口吻にアレンは気持ちよさそうにうっとりしている。
「ん…」
「アレン…」
 名前呼ぶと、うっすらと瞼が上がり潤んだ瞳に神田が映る。涙で瞳を潤ませ、ほんのりとピンクに染った胸を激しく上下している姿は、扇情的で神田に新たに欲望を抱かせる。
 情事が終わった後のアレンは、どんな時よりも一番艶めき、無防備で可愛い。
 しかし、少し無茶をした身体にはこれ以上の行為は、明日に影響する。
 神田は欲望を抑え、濡れた蕾からそれ抜く。途端、小さくアレンからか細い声が洩れる。
「神田…」
 ぽぅと息をついたアレンが、そっと神田の頬を撫でていく。それに手を重ね、唇に誘導する。手平に口吻し、赤く傷ついた手首に下ろしていく。
「どうして…、いきなりこんなこと?」
 まだ、その理由を聞かせてもらっていない。薄ぼんやりとする意識の中で、じっと神田を見つめると、神田は途端気まずげにアレンから視線を外した。
「神田…?」
 それでも、じっと待っていると、折れたのか短く嘆息をついた。アレンの腕を放し、狭いベッドのアレンの横に寝ころんだ。
「お前が…。あの、眼帯野郎とイチャついているから…」
「はぁ!?僕が、ラビとですか!?…だ、だれかそんなこと…」
 神田の言葉にぎょっとなる。確かに、ラビとゲームで遊んでいた。でも、それはたまにすることもあって、神田も知っている。それを今更ながらに、イチャついているというのはありえない。しかし、神田はびっくりしているアレンの傍らで、ぶすっとしたままだ。
「コムイの奴が、お前らが二人でこそこそしているって。人が任務から帰ってきた早々な」
「そ、そんな…」
 とんでもない誤解だ。
 ラビと、なんて…想像がつかない。
「なにもしてませんよ!!ラビとなんて冗談じゃないっ」
 こんなこと、神田だから受け入れられるのに。がぅっと噛み付くと、神田は大きく息を吐くと舌打ちした。神田にいたっては、まんまと乗せられてしまったというわけだ。
「くそっ。コムイのやろう」
「僕の方こそ、最悪ですよっ。腕縛るなんて…」
 きっと、しばらくは腕を捲れない。またリナリーに変な目で見られると思うと泣きたくなる。
 それに関しては神田も悪いと思っているのかバツが悪そうにした。
「だから、途中で外してやっただろう?」
「そ、そんな問題じゃないです!」
 神田にも腹が立つが、もっとコムイにはもっと腹が立つ。一言、なにかいってやらないと気がすまない。
いつまでも口をへの字にしたまま、臍を曲げているアレンに、神田は嘆息し「悪かった」と謝罪を口にした。
 神田が謝るなんて。思わずマジマジと珍しいものをみるように見てしまうと、コツンと軽く頭を叩かれた。でも愛情を感じられるそれは、ちっとも腹が立たない。それどころか、嬉しくなる。
「いつまでも見てるんじゃねぇよ。早く寝ろ」
「で、でも…」
 もう少し、この時間を味わっていたい。確かに身体はしんどいけれど、寝てしまうのももったいないと感じるのだ。
 しかし、それも神田の言葉で一転する。
「明日。お前、朝市で任務だ」
「へ!?」
「コムイからの伝言だ」
 信じられない。
 明日、アレンが任務だとわかっていて、したというのか。
 任務がある前の日は、二人の暗黙の了解とばかりにしなかったのに。
 開いた口が塞がらないとばかりに言葉を失っているアレンに、神田はしれっと言った。
「だから、一度で終わらせてやっただろうが」
「そ、そんな…!」
 その言葉は、任務がなければもっとしたかったという意味か。
 涙目になるアレンを横に神田は、先に休むとばかりに体勢を整え、目を瞑ってしまう。
「か、神田!!まだ、話が終わってないでしょっ」
 どんなに叫んでもアレンの言葉は無視され、深夜の教団に空しくも響いた。

 次の日、アレンがコムイにちゃんと文句を言えたかは、当人達だけが知っていることだった。



終わり。

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