D.Grayman

□「もう一度君に恋をして」 第一話『運命のルーレット』
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〜序章〜


「まって!待って下さい、神田!!」
 アレンは走っていた。
 認識出来るのは黒、黒、黒。一筋の光も差さぬ場所をアレンは走っている。そこが道なのか、それとも道なき道なのか。それすらも分からない所を、ただ遠ざかっていく背中を追っていた。
「神田!神田……っ!!」
 振り返りもしない背中を何度も呼ぶ。何度も何度も呼ぶ。
 けれどまるで、アレンの声など届いてないかのように、その後姿は振り返ることなくずっと先を歩いってしまう。
 暗い、自分の足元すらも見えない闇の中、どうしてか、その親しい姿だけが鮮明にアレンの瞳に色づいて見えた。でもそれを疑問にも思わない。
 ただ、なぜだかそっちには行ってはいけないような気がするのだ。神田を行かせてはいけない。アレンの心が、身体中が、そう叫んでいる。
 このまま行けば二度と会えないような…。そんな気がして堪らないのだ。
 でも、どうしてだろう…。
 アレンは息が切れるほど走っているのに、まったく追い付かないのだ。それどころか、どんどん遠ざかっているよう。二人の距離だけ開いていく。
 呼吸が辛い。心臓が悲鳴をあげている。
 それでも、行かせてはいけない。
 だって。だって…。
 じゃないと、もう二度と………!
「神田!行かないで下さい!!神田ーーーーっ!!」
 絶叫が、暗闇を切り裂く。




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