D.Grayman

□「もう一度君に恋をして」  第三話『不安』
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第三話『不安』


リナリーから、一通り説明聞いていた神田の表情は、徐々に険しさを現し、最後にはジロリとアレンを睨みつけていた。
「………。まったく、呆れてものも言えないな」
溜息まじりに言われると、アレンは小さくなるしかない。
「すみません…」
「まだアレン君の記憶がなくなった原因がまだ分かってないんだし。神田もそんなにらんじゃだめよ」
「はんっ。どうせ、コイツが馬鹿やったんだろ」
ひどい言われようだ。
でも、本当にその通りかもしれないので、言い返せない。
萎縮したまま、もう一度謝ると「俺に謝まられても、うぜぇよ」と言われて、あげくに面倒とばかりに、舌打ちされてしまった。
アレンはショックを隠しきれなかった。
向けられた視線は、今までの中で一番きつく、責めている。
「………っ」
気付けばアレンは、駆け出していた。
背中にリナリーの声がしたが、引き止めるものにはならなかった。


やみくもに走って、走って……。
気がつけば、見たことがない所だった。
「ここ、どこだろ…?」
ハァ、ハァとあがった息を整えながら、辺りを見渡す。
灰色の壁で構成されている教団は、まるで目立った所がなく、慣れないと迷子になりそうだ。
リナリーが案内してくれた時に、そう注意したけれど、まさにその通りだ。
一見、通ったと思っても、歩いていくとやはり来た事がない所だと気付く。
右に進めばいいか、左なのか。前?後?
八方塞がりに、アレンは途方にくれた。
「どうしよ……」
呟いた声は、予想外に響き、寂しく聞こえる。
アレンにますます不安が募っていく。
もしかして、このまま戻れなかったり……。なんてことないよね。
嫌な事が脳裏に過ぎり、慌てて首を振った。

でも、ふと、周りを見渡すと、静かすぎる教団に、まるでこの世界にたった独り取り残されたような気分になる。

心臓の音が、耳のすぐちかくに聞こえる。
「い、嫌だな。どうしたんだろう、僕……」
思ってたよりナーバスになっている自分に、苦笑いが込み上げてくる。
精一杯、虚勢を張るも、情けない程に声が震える。
恐怖に足がすくむ。
そこから、一歩も動けなくなる。

知らない場所に、知らない人達。彼らは、アレンを仲間だというけれど、でも、今アレンは皆が知っているアレンではない。
先程の向けられた視線を思い出す。
みんな、優しかったけど、本心は彼と同じなのかもしれない……。
きっとそうだ。


だから、きっと今のアレンを誰も探しには来ない。
アレンは本当に一人ぼっちだ…。




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