歯医者さんシリーズ

□恋心<こいする>
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「んで、相談って何だよ?」


「……いや…相談っつうか…俺にもよくわからねぇんだ…」

「はぁ?」

いつも明快で単刀直入なナルトにしては珍しい。

―こりゃ、めんどくせー事になりそうだな…
シカマルは心の中でひそかに溜め息をつく。

「気になるって、何が?それとも、誰かか?」


「…ん…何でだかわかんねぇけど、その人を見ると、目が離せなくなって…なんでもない仕草が、目に焼き付いて離れなくなる…もっと声を聴きてぇ、って思うんだ」





…ちょっと待てよ



…あれか?



…所謂(いわゆる)
『恋』ってヤツじゃねーのか?

まさか、この、恋愛なんかにひとかけらも縁が無かったナルトが…


はぁー
やっぱ、めんどくせー事になったぜ…

どうするよ…


…色恋方面は、一番苦手なんだよな…



明らかに、がっくりとうなだれた友人を見てナルトは、
「シカマル、どうしたんだよ?…なあ、これって何なのか分かるか?」
と、こちらの混惑はお構いなしに尋ねてくる。

「あー、その、そいつとはいつ会ったんだよ?これまで、んな話なかったじゃねーか」
「うん。おととい、歯医者で初めて会ったんだ」

「…って、おい!一目惚れかよ!!」

今度はナルトの方が驚いた。
「ひとめぼれ…って…ええええっっ!!!!!」
予想もしていなかった言葉に軽くパニックを起こしている。

…しまった…つい、言っちまった…
なるべく刺激しねー様に話してたのに…
…仕方ねーな
なるたけ落ち着かせるように…
「ああ、オメーがその人の事気になっちまうのは、『恋』してるからだな。間違いねーよ」

こうなったら、はっきり言ってやって、行動を起こさせた方が早いと、シカマルは判断した。

「あああ、あのさ、ひ、ひとめぼれって…俺が?…あの人に?」
「ああ。話してる時のオメーの顔。戸惑ってるけど、どっか嬉しそうで、眩しいモン思い出してる感じがしたからな。オレだって一目惚れの恋なんてした事ねえが、多分これがそうなんだろ」



「…これが…恋……」

一転して、ぼうっとなってしまったナルト。

こいつ、大丈夫かよ?
ケンカと音楽とサスケと張り合う事しか頭にねえヤツが、目覚めちまったんだ…
まあ、頭ん中グチャグチャになってんだろーな。

「とりあえず…会う約束とかしてんのか?」

「…一週間たったら、また会えるって…」
「なら、それまで考える時間もあるし、また会った時に、ホントかどうか確かめてみればいいだろ?」

しばらく呆然としていたナルトだが、俯(うつむ)いた後いきなり顔を上げた。
「よし!俺、確かめてみるってばよ!サンキューな、シカマル!」
と言って、放課後の教室を飛び出して行った。


切り替えはえーな、相変わらず…

一週間後とか言ってたが、今から突撃しそうな勢いだな、アイツ…

ああいう激しい直情型に想いを寄せられた相手に同情を感じつつも、ひとまず、ほっとする。


だが、この先の展開を考えると、憂鬱になってしまうシカマルなのであった。

…カンベンしてくれ…もう恋愛相談なんか受けねーぞ。女なんて関わるとめんどくせー生き物だからな…



だが、彼の願いは裏切られる事になる。


この後、ナルトが何か行き詰まるたびに、シカマルに相談を持ちかけて来たのは、言うまでもない。


そして、ナルトの想い人が、彼の思う『めんどくせー生き物』ではなく、もっと厄介なものだった事も知るのは、少し先の話である。








後書に続く
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