歯医者さんシリーズ
□素顔<はじめて>
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素
顔
「先生、うまいラーメン屋に連れてったげる!今日は俺のオゴリだってばよ!」
そうやって、先生を行きつけのラーメン屋『一楽』に連れ出した。
もらったばかりのバイト代を、愛用のガマちゃんにつめて。
そして、大きな野望を胸に秘めて。
「へえ〜、風情のある屋台だな。お前よく来てるの?」
「うん、ガキの頃から。でも、余分な金ねーし、そんなしょっちゅうは食えなかったけど。今は給料日に自分へのご褒美で来ることが多いってばよ」
「…今日も?」
「そ!先生にはいつも世話になってるし、お礼だってばよ」
「…何かお前、妙に嬉しそうだよね?」
「…!!べ、別に!…やっと一楽のラーメン食えるのが嬉しくってさ」
「…ふうん」
訝しげに見てくる先生にギクリとしながらも、何とか答える。
あぶねー。笑ってごまかしたけど、気付かれてねぇよな…
先生、普段はボーっとしてんのに、時々鋭いからな…
変に警戒されないようにしないと。
今日こそ先生の『素顔』を見るという野望を果たすために……!!