□贈物<プレゼント>
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――それは、八月のある暑い日の事。
テマリは買い物に来ていた。
弟、我愛羅の服を買いに。
高校生にもなった弟に対して、過保護だと言われようとも、テマリにとっては何歳になってもかわいい弟だ。
特に幼い頃、家庭の事情で、自分たち姉弟は普通に接して来られなかったため、今当たり前に仲良く過ごせることが何より嬉しかった。
そして、今日出かけたのには、もう一つ目的がある。
本当の所、メインはそちらの方だ。
そう、恋人のバースディプレゼントを用意するという、大切な目的が――
…もっとも、元来照れ屋のテマリはいつも、
「あんなのでも“一応”付き合ってやってるんだからな」
と素直に認めてはいなかったのだが…
贈物
弟に似合いそうな服を見繕い、さて、次はあいつのを…
そう考えていた時、テマリの歩いている所の数メートル先にある横道から、その張本人が出て来た。
プレゼントを買いに来ている所を本人に見つかるなど、気恥ずかしい上に、当日驚かせなくなってしまう。
何せ、誕生日など気付いてもいないように振る舞っていたのだから。
咄嗟に隠れてしまった。
普段から、買い物なんてめんどくせー、と言ってる男が珍しいな、と思った直後――
一人じゃ、ない…?
しかも、どう見ても男友達ではない。
確かあれは…
いの、とか言う、シカマルの同級生だ。
彼が言うところの“腐れ縁”
数少ない幼なじみの女友達らしいが…
何故一緒にいるんだ?
それも、まるでカップルのように、仲良さそうに笑いあって…
いのが何かを話し掛け、シカマルは少し照れた顔を見せている。
この日、シカマルに誘われた覚えはなかった。
…私と一緒にいるより、優先したということか…?
テマリは、一瞬目の前が真っ暗になったような気がした。
不思議と、怒りよりも、そんなやつのためにプレゼントを用意しようとしていた己に呆れる気持ちが強かった。
馬鹿だ、私は…!
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