天井裏部屋

□流血のファイル
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影の任務は引き継ぎから始まる。

そして引き継ぎには報告書のチェックが欠かせないものだ。





ファイル






9月15日 曇

記入者 ツノゴウ


六代目はこの日のために、いつになく執務に励んでおられた様子。

午後六時 普段は苦手とされる報告書の処理を終わらせ、執務室を退室。

のち、私室にて、はたけカカシと食事。
(詳細は別記:里で一番甘くないとされるケーキを買ってくるようにとの火影命令を遂行)

夕食ののち、小一時間の歓談。

午後八時 入浴
(注記:ここが最初の危険地帯である為、万全の備えをするも本日は至らず。しかし気を緩める事無く鼻栓ティッシュを取らぬよう注意しておかなければならない)

(特記:至らなくとも、湯上がりの先輩は濡れた髪と上気した肌のオプションが付くことを忘れるべからず!)







「な、先生、今日からはパジャマじゃなくて、さっき渡したアレ着てくれってばよ」

「……今から?」

「当たり前!だってアレ、寝間着代わりに着てもらうためにプレゼントしたんだからさ」

「パジャマ代わりなら、オレは暗部のアンダーの方がいいと思うけどね」

「あれも先生のために作られたんじゃねーかってぐらい似合うけど、俺が選んだのも、絶対似合うハズだってばよ」

「そうだな…ま、せっかくお前がくれたんだから、ありがたく着させてもらうよ。…あ、ナルト、お前後ろ向いておく事」

「え!なんで?!」

「何でって、着替えてる時に飛び掛かってくるでしょうが」

「や、だって」

「言う事聞かないんなら、コレ着ないけど?」

「ちぇーっ。どーせ後で散々いじられるんだしさ、見てもいーじゃんか」

「ぶつくさ言わない。………………ほら、着たぞ。どうだ?」

「……!!!う、わ…先生、すんげー似合う。やっぱ俺の見立ては間違ってなかったってばよ。この銀鼠(ぎんねず)色の着流しに帯は紺地に縹(はなだ)色の縞。先生ってば美人だから、シンプルで渋い色が映えるんだよなー」

「へえ。お前、着物の事なんて知ってたの?」

「へへ…実は呉服屋のねーちゃんにアドバイスしてもらったんだけど。あ!でも選んだのは俺だから」

「いつの間に用意してたんだ?…忙しいのに……うん、仕立てもいいし、これは上等の反物だろうね。…ナルト、ありがとうな」

「カカシ先生、おめでと…」

「……ん、っ、…おま、もう脱がす気…?」

「着物は脱がされるために着るもんだろ?」

「なに言って、…ぁ、あ、バ、…カ」







きゅ、しゅるりと帯を解く音も艶やかに、大きな手が白い肌の感触を楽しみながら撫ぜてゆく。

「は…ナンか、今日の先生違う…?」

「ん…あ、っ」

弄られることに慣れた躯は、普段から敏感な反応を返してくれるけれど、この夜はぬめるようにすべらかな絹の衣が肌を擦る度に、殊更びくびくと小さく跳ねる。

「せんせ、そこ、掴まってて」

寝所はすぐそこだというのに、いっときの我慢も出来ない。
壁に手をつかせ、後ろから片足を持ち上げて、はだけてあらわになった腿をするするとたどる。

うなじに舌を這わせ、耳朶や頸や肩を甘噛みして。

散々胸を苛めた後は、空いた方の手でとろりと泣いている張り詰めたそこを強めに扱いてやれば、面白いように啼いた。

「ぃ、ああ…!、ぁあぁっ、んん、…ぅやめ、ろ…」

ぶるりと身を震わせて、びっしりと肌を粟立てさせながらそれでも否と言い張る。

「なんで…?」

「くう、…っふ、ぁあ…よご、れる、…から、おま、えの…」

とうにからだは陥落してまともな言葉も紡げなくなっているくせに、
『せっかくナルトがくれた着物が汚れるから』
ままならない息の中でそんな事を言うものだから。

「先生ってば、んなかわいーこと言って、俺が止めれると思う?シワになろうが染みになろうが、全然かまわねぇから。だいたい、もう先生の我慢汁でココべとべとだし、後ろだってこんなぐずぐずになっちまってんのにどーすんの?

それとも…ホントに止めて欲しいのかよ…?」

耳まで紅くしながら、潤んだ瞳でふるふると僅かに首を横に振る。


「……ぬが、せ…て」







ぶ、ばあっっ

ドクドクドクドク…


「ぐ…っ、か、カカシせん、ぱ い……それっ、反 則で……す……」







午後九時 贈り物を手????

午後十時 壁際からやっと移動。寝所にてご就寝
(特記:献血パック×3。※増血剤必須!!!)

午前零時 テシロと交代。
(特記:献血パック×2。次回はタオルと替えの下履きを追加で装備に加えるべし。)


以上で報告を終了。

追記:今後の円滑な任務遂行のため、三日間の休暇を申請致します。







ペラリ

自然、報告書をめくる指が強張る。

「ふぅ………。六代目もまたとんでもないものを贈られたもんだな……。俺たち影の事も少しは考えて欲しいよ全く」

「そう?私は六代目のお気持ちよく分かるけど。裾が乱れて、肩まではだけた着物を身に纏わせた先輩なんて、想像しただけで萌えない?ふふ…」

「萌え…ってお前なあ……。はぁ〜お前らはいいよな。俺たちにとっちゃ切実な問題なんだぜ?貧血と…下半身の。おまけに医療班の主任から献血で搾り取られる羽目になっちまったし」

「あら、それこそ無駄に鼻血出すより里に貢献出来てるんだから忍として本望でしょう?」

「やれやれ…主任といい、女ってヤツは……。午後九時…うおっ!!ここ凄いな…ツノゴウのヤツ、報告書 書きながら思い出し鼻血してやがる。贈り物を…の後が判読不能だぜ?…午後十時……『壁際からやっと移動』か……。六代目、またベッドまで我慢出来なかったんだな。な…!『献血パック×3』分の出血だと?!………ど、どんだけヤバい事になってたんだか……。三日の休暇で回復できるのか?アイツ……」

ゴクリと生唾を飲み込む相方に、影はさらりと言い放つ。

「そんなの。

これからすぐに分かるわよ。報告書通りなのか、ね」





───火影室警護任務報告書

別名 『流血のファイル』


それは、
影達が身を持って知った経験と、後任への真剣な忠告、

そして、
記入者と閲覧者の生々しい血の跡に彩られた、暗部の記録である。


今夜もまた、血塗られた1ページが書き加えられてゆく。





後書へ続く
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