天井裏部屋
□バレンタインの憂鬱
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バレンタインの憂鬱
「ただいま…」
任務から帰って火影の私室に入るなり口づけられた。
「ん……ふ…」
濃厚な口づけに身体も溶けかけた頃、漸く唇が離れていった。
「ごめん! 先に風呂入って来るってばよ」
そう言ってさっさと行ってしまった。
呆気に取られたのはカカシの方。いつもなら、一緒に入ろうと強引なまでに引っ張っていくのに。
いつもと違う様子に、些か不安になりながらもナルトが出てくるのを待つ。
「お先だってばよ」と言いながら出てきたナルトと入れ違いに風呂に向かう。すれ違いざまナルトに腕を掴まれてこう言われた。
「先生、出来るだけゆっくり入ってきて」
「う、うん…」
益々いつもとの違いに不安は募っていく。
言われた通り出来るだけゆっくりと入り風呂を出てみれば、甘いチョコの香りがする。
ああ、今日はバレンタインだったかと思い至り、ナルトの様子が変だった事に納得する。
自分はチョコの一つも用意していない。その事でナルトは拗ねてしまったのではないか。カカシはそう思った。
部屋に戻った途端、結界を張られた事に気づいた。
今までにも何度か張られた事がある。カカシが影達を気にしないでいいように。
そんな日はより感じてしまい、何時だったか強請ってしまった事さえあった。
そして今日はバレンタイン。チョコの用意がない代わりに、少しは甘えてみようかなとチラッとそんな考えが頭を過ぎる。
「待ってたってばよ」
ニタリと、本当にニタリと厭らしい笑いを浮かべ、全裸のナルトが振り向いた。
その顔と、部屋に充満する甘い匂いに嫌な予感が走り、眉を寄せるカカシ。
「じゃーん!」
そう叫びながら身体をカカシに向け、見せ付けたモノは──
チョコを塗りたくったナルト自身。それは固く天を向き、そそり立つ。
カカシは回れ右と後を向き、結界を解こうと印を組む。が、最後まで組む前にナルトに阻止されてしまった。
「無駄だってばよ。外に暗部達にさらに結界を張らせてる。逃げられないって」
カカシはげんなりとした顔を隠そうともせず言った。
「何がしたいのよ?」
「したいんじゃなくて、《して》欲しいの」
「オレにチョコの付いたソレを舐めろと?」
「ピンポーン! あったりー!」
ニッコリと、いや、カカシにとってはニンマリと笑ってナルトが言った。
「舐めてくれってばよ」
「嫌」
「何で!? だってせんせー、前にオレの事愛したいって言ったじゃん!」
「それとこれとは別。オレは甘いものは苦手なの、知ってるだろう?」
「だからビターにしたってばよ」
「いや…そういう問題じゃ…」
うるうると期待に満ちた瞳で見つめるナルトの姿は、よく懐いた大型犬にも似て…。
カカシは大きくため息を吐いた。
「…はあ……仕方ない…今日だけだからな、そんなチョコの付いたモン舐めるのは」
呆れ半分、諦めと怒りを少し混ぜてカカシは言い、ナルトの前に跪く。
恐る恐る舌を出し、尖端をペろりと舐めた。
「うえ…甘…」
いくらビターだといっても、チョコはチョコ。甘いものが苦手なカカシにとってはかなり甘く感じる。
眉間にシワを寄せながら、それでもナルトの屹立に手を添え口に含む。
間近で嗅ぐ甘い匂いは、まるで拷問のようだとカカシは思った。
ペろりと舌を出す様を上から眺め、そのエロさにくらりとする。もしもカカシが「うえ…」と口を離さなかったら、自分は鼻血を噴き出していたのではないかと思う。
これを舐めたら次はカカシに塗ってみようか…。
ペニスだけでなく、両乳首やアナルにまで。
乳首に塗れば、その感触にぷくんと芯を持ってナルトを誘ってくる。コリコリと舌に楽しい感触を伝えてくるだろう。
『コリコリして甘いってばよ』
『ひゃっ…やだ…あっ…』
中心に塗ればトロリと先走りを零し、その銀の叢を汚す。指に絡めれば、小さな痛みに眉を寄せるだろうか。
『っ……ん…っふ…』
後肛には襞一本一本丁寧に塗っていこうか。ヒクンと身体が跳ね、腰を揺らめかせるだろう。
カカシの雄から流れ落ちてきた雫と混ざり合い、その眺めはいっそう厭らしく見えるだろう。
舌で丁寧に舐めとって中に挿し込んだら、カカシはどんな声を上げるだろうか。
舌では物足りないと強請ってくれるだろうか。
『あっ…ん…ナル…ト…も、挿れ…て…』
ツ…と鼻血が流れる。
(やっべぇ…カカシせんせー、想像の中でも色っぽいってばよ…)
慌てて鼻血を拭いながら思う。
思う存分カカシを堪能したら、再び自分の雄にチョコを塗ってカカシの中に侵入するのだ。
どれだけ卑猥なんだろう…。
クチャ…クチャ…
ピチャ…チュパッ…
股間から響く淫猥な音を聞きながら、ナルトはそんな妄想を繰り広げていた。
ニタニタにやにやとカカシの痴態を妄想していると、苦しげな呼吸が聞こえてくる。
快楽による荒い息遣いとも違う呼吸にカカシを見遣れば、カカシは青い顔をしてナルトを銜えていた。
「カカシせんせー?」
カカシは少しの間ナルトの雄を舐めていたが「も、ダメ…」と小さく呟いた後、駆け出しながら結界を全て解き出て行った。
「カカシ先生!?」
追いかけてみれば、カカシはトイレで吐いていた。
「大丈夫だってば?」
ナルトが背中を摩りながら聞けば、カカシはふるふると首を振る。
「気持ち…悪…」
「ごめんってばよ…」
それにもカカシは首を振る。吐くだけ吐いて落ち着いたのか、カカシは洗面所に移り口を濯ぐ。
「も…匂い、きつい…」
「ごめん。今落としてくるから…」
カカシがへたり込んでしまったので、ナルトは慌ててシャワーを浴びに入った。
シャワーの音がし始めると、ふらりとカカシは立ち上がり洗面所を出て行く。
『カカシ先輩、どちらに?』
「…風に当たってくる」
カカシはそのまま火影邸を出て行ってしまった。
「あれ? カカシ先生?」
『カカシ先輩なら、風に当たってくると外に…』
「え? 先生、確か寝巻き一枚だったよな?」
『あ、そういえば…』
「うわっ、連れ戻しに行くってばよ! 気配消してねぇだろうな…」
ナルトはコートを掴み飛び出して行く。
護衛に付いて行く者、寝室のチョコを片付ける者共に大きなため息を吐く。
今日は結界を張られて鼻血の心配がなく安心していたのに、この展開は間違いなく鼻血もんだ。
帰って来たら、また結界張ってくれないだろうか…。密かに願う暗部達だった。
案の定、気配を消しているカカシを探すのに苦労するナルト。
普段から気配は薄いんだから消さないでくれってばよ!と心の中で叫びながらカカシを探す為、火影邸の屋上に出た。
それが幸いしたのか、カカシを見つけた。四代目の火影岩の上。