天井裏部屋

□跪いて、足をお舐め
1ページ/5ページ






いて、
  をお







「ナルトが刺された?」



カカシは影がもたらした情報を疑う。

「嘘でしょ」

「いえ」

火影不在時も、唯一部屋の滞在を認められたカカシは、窓際へ佇みカーテンを掴む。

無慈悲な月光から身を隠しながら、影は固い面越しに答えた。

「先輩もご存じのように、六代目は政情不安な小国間の和平に尽力を注いでました。ようやく和議が整い、その調停役とお出かけになりましたが…どうやら両国とも一部の反乱分子が相手国の君主の首を狙っていたようです」

「五大国の忍の長が、和平への道へ漕ぎ着けた言うのに?」

「長期間、敵同士だった国です」

「見兼ねた他国の人間が、ポッと平和を口にした所で、国民全部を抑えきれなかった訳か…。まあいい勉強になったね。苦いけど」

「トップ間が望んだ所で、容易に憎しみの連鎖は断ち切れなかったと言う事ですね」

「…だけど所詮忍を持たぬ国。護衛たちだけでも制圧は可能だったでしょ?」

無駄を削ぎ落した会話に、影は一刻も早く詳細を知りたいのだろうと、カカシの胸中を思いはかる。

「制圧はしましたが、子供が紛れ込みまして…争いに巻き込まれないようにと六代目が自ら保護を」

「無茶したんだ?」

「…いえ」

影はその長い髪を闇へと同化させながら、カカシを見つめる。

「そうだね、それくらいじゃ…」

カカシは顎に指を当て、考えを吐きだした。

「その子供、厳重警備の部屋にどうやって現れたの? 幾ら小国でも不自然じゃない?」

「さすが先輩。中にいる者に手引きを受けたそうです」

「つまりその子供も…反乱分子って言う訳?」

「はい、六代目が抱き上げた所で、子供が隠し持っていたナイフでグサっと。だけど六代目に命の別状はなく、九尾の回復力もあって、予定通り帰還するとの事」

「そう。……オレ、ナルトの情に厚い所好きだよ」

ナルトの帰還間際、ソワソワと落ち着かない所に、バシャリと冷水を浴びせられたたカカシは、星の無い空を見つめながら呟く。

「私たちもです。六代目の今回の行動、支持する人間は多いと思います」

だけどと、カカシはヒソリと反論する。

「まだまだ思慮が甘いね、アイツ」








暗部内に緊急通報。

本日六代目の帰還。

久方の奥方との再会のため、天井裏警備は、必要な輸血パックと造血剤、保湿の高いティッシュを用意(ファイル参照)

なお、掃除道具も必ず持参。
そして可能な限り、掃除して帰る事(部隊長の機嫌を損ねないため)

命の危険がある場合は仕方ない事とする。



「なーなー先生は? どうしてるってばよ?」

ナルトは廊下をウキウキと歩きながら、留守居を任せていた影に尋ねる。

「先輩なら、先程入浴を済ませ、六代目の帰還をお待ちしています」

「あちゃ、一緒に入りたかったのに間に合わなかったってばよ! あーでも湯上り卵肌の先生を味わえるからいいかな」

「入浴は怪我に触りますよ」

影は当分禁止の筈だと、警告を含ませる。

「ああ、それなら治った」

ケロリとした言葉に、影は目を丸くした。

「治ったって…。幾ら六代目でも、そんなに速く刺し傷が回復する筈が…」

「いや、確かに刺されたけどさ。…オレを刺した子供、殆ど力なんて籠めてなかった。ガチガチに怯えて謝られて…それ慰めるのに必死! 腹が立って、回り奴らに説教してやった。その分、出血は多くなったけど、大した深さじゃないし。帰りの道中、サクラちゃんにレバーとかほうれん草とか、栄養剤とか沢山食べさせられたから、力が滾っちゃってさ。速く先生に会いたくてたまらなかったってばよ!」

「………」

部隊長である影は、今回火影に随行した仲間の顔を一人一人思い起こした。

雑な報告書を送って来た犯人を、お仕置きしようと決意する。

おかげで…。

「六代目っ、少々報告に不備がありまして、先輩は誤解を!」

普段クールビューティと誉れ高い影は、珍しく制御されていない声を上げる。

「先生、ただいま!!」

だが遅く、六代目は火影室の扉を開いた。

引き留めるべく上げた虚しい手をそのままに、影は数秒考え……ま、いいかと結論を出した。

どうせ最後はラブラブだ。








「先生、ただいま!!」

「おかえり、ナルト」

ナルトは久方ぶりの恋人の元へ飛んでいき、強く抱きしめる。

火照りの残る首筋に鼻を埋め、思う存分シャボンの香りに包まれた肌を味わった。

「会いたかったてばよ!」

そう言いながら、ナルトは手を降ろし臀部を揉む。

「オレもだよ」

だがカカシは回した腕で、羽織りの襟首を掴むと、グイッと距離を開ける。

「先生?」

「疲れたでしょ?」

穏やかに目を細めたカカシは、腕を組みガードの構え。

「それより先生不足〜!」

「…!」

ナルトはカカシの両頬を掌で挟み、顔中にキスの雨を降らせた。

「先生も連れてけば良かったってばよ。公私混同?とか考えちまったあの時のオレを、帰りの道中ずっと呪ったってばよ!」

「あのな、一緒にいたって恋人の触れあいは…」

「出来なくてもいいってばよ。ただ先生の笑顔が見れれば…。へへへ、今夜は寝かせないからな!」

「それなんだけどな、ナルト」

カカシは頬を挟む手首を掴み、再びバリっと引き剥がす。

「おまえ、長旅で疲れただろう? それに怪我も負ってるって聞いた。今日は大人しく…」

「ああ、それなら治った」

「そう。でも幾ら…治ったっ?」

どうも先程の影との会話と言い、何か誤解が生じているらしいと、ナルトは事情を説明する。

説明すれば、すんなり恋人の顔が綻ぶと思ったが…。

「先生?」

カカシの顔は浮かないまま。

「…おまえさあ、子供が刺客だって想定した?」

「いや、驚いたけど。でも刃物の持ち方も碌に知らない子供に、オレが殺られる訳ないってばよ」

「…六代目は良い意味で型破りだと言われてるけど、オレからしたら火影の自覚が足りないね。もしその子供が忍だったら、おまえ死んでるよ」

「……でも」

「そしたら、六代目は木の葉も守れず、間抜けに死んだって広まるね」

「先生、もし子供が忍だったら、オレ気付くってばよ」

「ふうん…。でもね、四代目は子供が刺客である可能性も考慮して助けに行くよ」

「…な、なんだよっ」

ナルトは言われの無い批難だと激昂する。

「オレと父ちゃん比べるのかよ!!」

「いや見本にして。…比べるまでもないでしょ?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ