天井裏部屋

□居酒屋プロポーズ
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酒屋プロポーズ






がやがやとほど好いざわめきの中、テーブル毎に区切られた後ろの席に見知らぬ集団が座る。
彼らはこちらに気付く事なく話し始める。


「なあ、六代目は結婚しないのかなあ?」

(へ?オレ?)

「まだ早いだろ?」

「いや、愛人がいるって話だ」

(愛人じゃねぇ!恋人だ!誤解生むような事言うなー!)

「まじかよ?」

「あ、オレも聞いた。なんでも絶世の美女だとか」

(うん、うん。センセーは美人だ)

「さすが火影様だな。羨ましい」

「だけど、火影様も気が気じゃないだろ?そんな美女だとよ。引く手数多だろ?」

「そのうち婚約発表とかすんじゃね?」

「あれ?六代目、カカシ上忍が恋人とか宣言しなかったか?」

「ありゃ冗談だろうよ。男だぞ? カカシ上忍。それに六代目はあの自来也様の弟子だろ? 男が恋人だなんてありえねーって」

(恋人なんだけど…)

「だな。なんでもその愛人を毎晩可愛がってるって聞いたぞ」

「ひゃー、羨ましいねぇ!」

「しかし、そんなにお盛んなら気ィつけないとな」

「何を?」

「刺客だよ、刺客」

「あっ、何時だったか襲われたらしいぞ?」

「マジかよ?」

「なんでもその愛人が倒したんだってよ?」

「すげえな、その愛人」

「しかも、指一本も使わずに倒したんだとか」

「指一本使わず?どんな忍術使ったんだ?」

「さあ…、しかし凄いよな。ま、火影の愛人になるにゃあ、なまじっかな忍じゃ勤まらんってこったな」


うんうんと頷くのを黙って聞いていたカカシは頭を抱えた。
ここの機密管理はどうなっているのよ?と、目の前に座る影の部隊長を勤める女暗部にジトッと目を向ける。
と、女暗部は私じゃないとブンブン首を振る。隣のサクラに目を向ければ、また然り。
それじゃお前かとナルトに目を向ける。


「オレは何もしてないってばよ」


顔を引き攣らせ否定する。
後ろの会話はまだ続いている。



「何時結婚なさるのかねぇ?」

「気ィ早えよ。婚約だってまだだろうに」

「だけどよ、毎晩可愛がられてるんだろ?そのうち妊娠なんて事だってあるだろうよ」

「あー、できちゃった婚かあ」

「新郎、妊婦の登場です、ってか?」


どっと笑いが起こる。
それに顔を赤くしながら怒りマークを浮かべるカカシ。
それにオロオロしながら、それでもナルトは口走る。


「きっとカカシ先生には白は似合うってばよ」


ギロリとカカシが睨む。


「…オレに何を着せようっての?」


いつもより低い声でカカシが問う。

(まずい!カカシ先生怒ってる…。やべぇよ、このままじゃ今晩ヤらしてもらえないってばよ…)


「え、いや、あのー…」

「ウエディングドレスでしょ、カカシ先生」

「サッ、サクラちゃん!?」

「きっと似合いますよ」

「あのね…」


そう呟いて深いため息を零すカカシ。


「結婚自体ありえないでしょうよ…」

「な、何でだってば?」

「何が?」

「先生、オレと結婚したくないってば?」

「え?」

「オレ、何度も愛してるって言ったってば。信じてなかったってば?それにオレはもう夫婦のつもりでいたってばよ」

「お前ね…何で夫婦よ?籍だって入ってないでしょうが。しかも、こんな所で…」

「こんな所でもあんな所でも言うってばよ!先生、愛してる!だっ!」
「デカイ声出すな」


ゴチンと頭を殴られ、ちょっと涙目になるナルト。その一方で赤くなった顔を背けるカカシ。
そのカカシを可愛いと見つめる女二人。


「ろっ六代目!?」


ナルトの大声に後ろにいた連中が慌てる。ナルトを餌にろくでもない話をしていたのだ、無理もない。


「…結婚出来なかったら、お前らのせいだからな」


ナルトが恨み言を言えば、その者達は青くなる。


「人のせいにするな」


またカカシに怒られる。


「じゃあ、結婚してくれるってば?」

「それとこれとは話が別でしょうが。責任転嫁するなって言ってるの」


「あ、あの…」


オロオロする連中に気にするなと微笑んで。


「分かったってば。だから、結婚してくれるってば?」

「何で話がそーなるのよ?」

「だって、そうだってば。先生さっき結婚なんてありえないって言ったってば…」

「そりゃそーでしょうよ。木の葉では男同士なんて認められてないんだからな」

「そんなの、オレが認めればいいってばよ」

「あのねぇ、そういう訳にはいかないの。法ってものがあるんだから」

「そんなもん、オレが変えてみせるってばよ!」


そう言うナルトに呆れるカカシ。何とか言ってやってと女二人を見るが、女達は肩を竦めただけだった。


「諦めた方がいいですよ、カカシ先生」

「そうですね。六代目は絶対諦めませんからね」

「先生のウエディング姿、楽しみにしてますね」

「お前らなあ…」


がっくりと肩を落とすカカシ。そんなカカシの肩を掴み自分の方へ向かせ問い質す。


「結婚してくれるってば?」

「…する訳ないでしょうが!」


赤くなり、ゴチンと軽くナルトを殴って姿を消す。


「カカシ先生!?」

「あんたもバカね。こんな所でプロポーズするなんて」

「いくら何でも返事しにくいですよね。カカシ先輩、恥ずかしがり屋だし」

「ったく、デリカシーってもんがないんだから」


火影に対して散々な言いようである。
が、カカシがいなくなった事に動揺しているナルトは気づかない。気づいたとしても、この二人なら気にしないであろうが。


「ンな事言ったって…サクラちゃん…」

「早く追いかけて仲直りした方がいいんじゃないの?」

「そうだってばよ」


ごめんサクラちゃんといいながら、ナルトも姿を消す。
やれやれと女二人ため息を吐く。


「今夜も天井裏は大変だわ」

「ふふ…任務前に献血よろしくね」

「ええ、たっぷり取っておいてちょうだい」


一連の行動を見守っていた連中が呟く。


「六代目の愛人って、カカシ上忍だったんだ…」

「あんた達、それを広めたら命ないわよ?」


コクコクと頷くも、翌日には里中にその噂は広まったのだった。





End

解説に続く
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