天井裏部屋

□婚姻届
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意外性No.1忍者は、火影となった今でもNo.1だった。





 






任務を終え、報告書を提出すると六代目火影ナルトはニッコリと笑って言った。


「お疲れ。あと少しで終わるから、部屋で待っててくれってばよ」


ナルトが火影になった今でもカカシとの恋人関係は続いていた。
ナルトはそれを隠そうなどとは思ってはいなかったが、カカシに対する危険を増やさない為におおっぴらには宣言していない。
ただ、周りにいる者達にはしっかりバレてはいたが。
ナルトは平然とするどころか、バレてる連中には惚気る始末。いたたまれないのはカカシの方。
カカシは至って正常な感覚の持ち主なのだ。

ただ、カカシはこの関係は長くは続かないだろうと思っている。
自分はミナトを忘れられないし、ナルトは若い。
自分ではなく、もっと若く綺麗な女の子を見つけるだろう。それまでの関係だと思っている。
ナルトにそんな子が出来たら、後腐れなく別れてやるつもりでいる。例えそれで自分の胸がどんなに痛んでも。

ナルトはそんなカカシの想いを敏感に感じ取っている。そんな所は聡い子だ。幼い時の経験がそうさせるのだろう。ただ、ナルトは自分の感情にも素直だった。
欲しいものは絶対に諦めない。諦めるという事をしない。
そうしてカカシを手に入れたのだ。四代目を愛しているカカシごと。

カカシとてナルトの事は憎からず思っている。
だが、幼い自分が初めて愛した人で、一人ぼっちだった自分を唯一愛してくれた人だ。全身全霊をかけて彼の人を愛した。心を捧げた人だ。
死して尚愛し続けた人。彼の愛があったればこそ、その愛に支えられて今日(こんにち)まで生きてきた。
ナルトが好きになりました。ミナトの事は綺麗な思い出になりました。という訳にはいかないのである。

そんなカカシをナルトは丸ごと愛するという。カカシが誰を心の底で愛していても、生きてカカシを愛せるのは自分しかいないと笑う。
そう豪語するナルトを頼もしいと思うと同時に、懐の深さも感じる。
それは自分にはないものだとカカシは思った。

だからこそ、ナルトに自分以外の大切な人が出来たら別れてやろうと思ったのだ。ましてナルトは火影になった。ミナトも火影の責務として結婚した。その時の胸の痛みは忘れてはいない。
だからこその予防線。
あの時の悲しみ、苦しみ、そして絶望を二度と味あわない為に。

そうやって予防線を張ってきたからこそ、カカシはナルトと付き合ってこれたのだ。ナルトにカカシと別れるつもりなど微塵もなくても。
ナルトは一度手に入れたものは決して手放す事はないというのに。

そんなこともカカシは分かっている。だが、ミナトとの経験がカカシを臆病にもさせていた。


そして、その臆病なカカシの前に突き付けられた現実──
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