読み切りの短編小説

□七夕の空…(レイエ)
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「晴れてよかったな」
「ほんとうですね〜」

小さな草原となっているお月見山の広場から、満点の星空を眺めるレッドとイエロー。

昨日まで親の敵のようにふっていた雨はどこに行ったのだろう。

浴衣姿の二人が寝転んでいる草原を心地よい風が吹き抜けていく。

ただ、イエローはずっと気になっていることがあった。
僕を迎えに来てくれた時からずっと持ってきていた小さなクーラーボックス。
中身を聞いても「あとで」と答えるばかり。

ちらっとそれを見て、再び星の煌めく空を眺める。
二つの光り輝く星を引き裂くように長く連らなった星星が大きな流れを作っている。

「毎年この日の天気は雨だったから今日は本当によかった…」
「ええ、こんな風に七夕を過ごすのは初めてですね」

ミルキーウェイとも呼ばれる天の川を挟むようにして、アルタイルとデネブ、そう呼ばれる二つの星はお互いを求めるように輝きあう。

空を見上げたままレッドが言った。
「織姫と…彦星だっけ?なんとも不思議な感じだよな」
え?とイエローがレッドの顔を覗き込む。

「ん?だってさ、どうしてその川を渡らないんだって話。そうだろ?」
面白おかしくレッドは笑う。

相変わらず情緒がないなぁ…と思い、苦笑いするイエロー。
「でも、あの二人は一年に一度、というのがいいと思ってるんじゃないんですか?」
二つの星を遠い人のように思い、そう直感で感じた。

「それじゃ俺は彦星になれないや、俺は一年に一度だとたまんないもん」
そう言って無邪気に笑いながら僕の顔を振り返る。

「ええ、僕もです」
(そんな風にずっと愛し合うことが出来ればいいんですけど…)
レッドの顔を見て表面上笑いながらそう心で考える。

それに気付いてか、クーラーボックスから何かが入った箱を取り出す。
今見上げている星空のような包装紙を丁寧に開いて、中から何かを取り出した。

「レッドさんそれって…」

「頑張って作ったんだけどさ…よかったらどう?」

それは色鮮やかな「そうめん」だった。
赤、黄、白…色素の薄いその三色のそうめんは少し太く、なおかつかなりの長さをほこっていた。
イエローが余りのことに見とれていると、レッドは満足したかのようにスッと笑い、クーラーボックスからそれらのセットを取り出して、そこにそうめんを流し込む。

「なぁ、このそうめんのように長く太い付き合いができるといいよな…」
「はい…そうですね…」

その日食べたそうめんはいつもよりおいしく、なぜか少し甘酸っぱかった…

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