ポケットモンスターspecial

□エピソードフォー
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額にかいた汗を腕でぬぐう。
どれほど探したのだろうか。
この森に入ったのは朝のはずだったが、すでに日が昇っている。
少し捜索範囲も広げたみたが、あの3匹の行方は今だ知れず。
「ふう…どこにいるんだよ…」
少し愚痴をもらしながら、腰のポーチからポゲギアを取り出してコールする。
相手はもちろんレモンだった。

「……ひまだなぁ〜」
シュウとは別行動をとり、3匹と別れたこの木の下でぼーっとしている。
ときどき眠りそうになり、顔をはたいて根気よく意識を保つ。
そして今も目をこすっていた。
とその時、ポケギアが着信音を静かにならした。
「は〜い、あ、シュウ?見つかったの?」
『…と言うことはまだ戻って無い…か』
「うん、さっきから野生のポケモンが動き回ってるだけだよ〜」
レモンの言うとおり、辺りをいろいろなポケモンが行き来している。
それも、ものすごくあわただしく。
『そうか…わかった。じゃあ何かあったら…』
「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」

スピーカー越しにレモンの悲鳴が響く。
いきなりのことに、思わずポケギアを手落としそうになった。
「レモン…?レモン!」
通信が突然途絶えた…レモンの身に何かがあったことを示しているのだろう。
ここからあの場所までは、それなりに距離がある。
危険を承知の上でローシューズのスイッチをオンにし、風を切り走る。
途中木にぶつかりそうになりながらも、必死に駆けつける。

やっと広い道に出たかと思うと、飛び出してきた《何か》にぶつかりそうになる。
「うわったった……今のは…あ、レモン!」
よたよたと疲れを感じさせる走りでそれらを後から追いかけるレモンが目に入った。
「あ〜!シュ、シュウ!逃げて早く〜!」
え?とレモンの後ろを見ると、何かが群れになって迫ってくる。
「ん〜?…まさか…」
…よくよく眼を凝らすと、それは…スピアーの大軍だった。
「なんで追っかけられてんだよー!!」
「えっとね…はあはあ…スピアーの巣にちょっかい出したって…はあはあ…」
得意の能力で3匹から聞き出してくれたんだろう。
が…やっと会えたと思ったら…あいつら何やってんだ!
ここで脱出の方法を考える。思いつくのは何とかやり過ごせる場所に隠れること。
それを実行するため、シューズを切って3匹のもとに走る。
「おい、掴まれ!」
足の速いイーブイはいいとして、のろまなフシギダネを脇に抱え、ムウマをこけそうになっているレモンのもとに向かわせる。

はあはあ…
モンスターボールに戻した方がいいのだろうが、ここで止まったりなんかすると確実に追いつかれる。
走れる限り、ありったけの力を出して走る。
と、都合良く巨大な木の根に空洞があるのを見つける。
「レモーン!あそこに飛び込めー!!」
そう言うや否や自分もそこに飛び込んでレモンが飛び込んでくるのを受けとめる。


お互いが息を殺してその場に潜む。
と、すぐにその上空をスピアーの群れが通り過ぎていく。
予想をはるかに超える数で、もしも襲われていたら元も子も無かっただろう。
「…ねえ、もう離していいでしょ?」
その声でふと自分の手元を見る。
「うわわ、ごめん」
すぐに握っていた手を離して外へ飛び出す。
そのあとで顔を赤く染めたレモンがゆっくりと出てくる。
照れているのか走りつかれたのか、残念ながら分からなかった。
それを聞こうと思ったのだが、レモンがシュウの方をみて今度は顔を真っ青に染めたもんだから、そうもいかなかった。
何かいやな予感がして、恐る恐る後ろを振り返る。

キラッと光る針を三本持った黄色いポケモン…スピアーが一匹だけその真っ赤な目でこちらをにらみ下ろしていた。
「レモン、隠れて!」
そう言ってイーブイとともにスピアーの前に立ちふさがる。
ムウマとフシギダネがレモンをさっきの穴に誘導してそこをガードする。


「イーブイ、でんこうせっか!」
イーブイの素早さを生かした攻撃パターンをとることに決め、足早に指示をする。
が、スピアーはそれを上回る速度でそれを回避。
そして二本の針を突き出して攻撃する。
ダブルニードルだ。
「イーブイ、高速移動でかわしてもう一度でんこうせっか!」
それほどうまくいくとは思わなかったが、予想をはるかに超える速度で背中に技を決める。
そうすることで優雅に飛んでいたその体が激しくぐらつく。

いける!

そう確信すると、ポーチから空のモンスターボールを取り出す。
「フシギダネ、つるのむち!」
後方にスタンバイしていたフシギダネに指示を出す。
「ダネッ!」
フシギダネは、シュウの考えを読み取ったかのように鞭でスピアーを捕まえる。
「いっけー!」
モンスターボールを絶妙のコントロールでスピアーに当てる。
そうしてボールの中に入ったスピアーを、鞭をひっこめたフシギダネ、地面に降り立ったイーブイ、
そしてシュウとその後ろで隠れていたレモンとムウマが静かに見守る。

1…2…3……

激しく揺れていたボールがその動きを静かに止めた。








「でもよくつかまえられたね〜」
さっきの戦闘場所を遠く離れ、森の出口付近まで来た時だ。
大事にボールを手に持つシュウにレモンがそう声をかける。
「当然!これが実力だよ!」
そう返答されたレモンは蔑んだ笑顔でシュウを見た後、足元を歩くイーブイの頭を撫でた。
それを見たシュウは少し残念そうな顔をするが、手元のボールを見つめて自然と笑顔がほころぶ。

そうしてやっとのことで森を抜けたシュウたちは目的の町、ヒチシティにたどり着いたのだった…

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