短編
□時は刻む
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「…きょ…さ…、…めん…い…」
微かに聞こえる声、それは弱々しくとても悲しい気持ちにさせた
この声は誰のだった?
薄れていく意識に頭が回らず、そのまま意識を手放した
【時は刻む】
あれから雲雀は三日間目を覚まさなかった。
そして目を覚ましたのは綱吉が帰ろうとした夕方だった
「きょう…さん…恭弥さん!」
確認する様に何度も僕の名前を呼び、涙を流す。あぁ、あの声はこの子のだったね、泣き虫は今も昔も変わらないそう思いながら柔らかい髪をあやす様に撫でた
時は人の命を刻む
なんて上手く言ったものだ
確かに人なんて何時事故に巻き込まれ死ぬかも分からない
一分違うだけで死ぬかも、死なないかもしれない
そんなことを言うと人は自然と命の駆け引きでもして生き長らえているんだと僕は思う
「恭弥さん?」
撫でる手がいつの間にか止まっていたのか、綱吉は不思議そうに僕の名前を呼んだ
何でも無いよと頭をよしよしと撫でてやると気持ち良さそうな顔をする
「君は超直感があるんでしょ?」
「え?はい、ありますけどどうしたんですか?」
また首を傾げる綱吉になら僕より早く死なないね
と言うと綱吉は目を見開いた
「…もし、俺が死んでも大丈夫ですよ。もう皆しっかり一人で立ててますから」
そう悲しそうに笑う綱吉に何故か不安になった
何かに繋ぎ止めておかなければいつ消えてしまうか分からない君の存在が
「そうだね。でも、僕には君が必要だよ」
「…恭弥さんにそんなこと言われるなんて思いませんでした。」
綱吉手を引き寄せ手の甲にキスを落とす、昔はそれだけで顔を紅くして可愛かったのに今では軽く流してくる
間を開けて感想を漏らした綱吉は穏やかに笑っていた。
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