Love Diary【Other】

強く優しく抱きしめて(2010.6.21)
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 マスターが出かけちゃって、一緒に居たいからってつまらないテレビを見ているフリももう必要なくなって、やる事も無いから部屋に戻った。ドアを開けると、半分はなんとなく女の子っぽくて、もう半分はなんとなく男の子っぽい部屋が現れる。
 まぁ、それはいいとして。丁度部屋の中間の位置に、窓に面するようにカフェっぽい感じでセッティングされてるテーブルと椅子。この椅子が、俺は好きだけど嫌いなんだ。子供っぽくないオシャレな所は好き。でも、やたらと脚が長い椅子だから、座ると否応無しに足がぶらぶらするところが嫌い。“子供”って事実を突きつけられてる気がするし。
 もやっとした気持ちを抱えながら、腰掛けた椅子は、いつもに増して自分の幼さを実感させた。



「レーンー。」

 どれくらいの時間が経ったんだろう。頬杖をついてぼけっとしていた俺に、後ろからリンの声が飛んできた。振り返るのも面倒くさくてそのままにしていたら、リンの近寄ってくる気配がして、何か硬いものが頭にぶつかった。ちょっと痛い。

「ん。」
「・・・サンキュ。」

 差し出されたそれはアイスの浮いた冷たいココア。あぁ、さっきはカップの底の角が丁度当たったんだな。なんて分析しながら口をつける。うん、この甘さがたまんない。きっとカイト兄さんのアイスを失敬して作ったに違いない。

 リンと二人並んで、黙ってココアを飲む。窓の外の空は泣き出しそうに重く垂れ込めていて、道行く人もまばらになっていた。マスター、傘持っていったっけ?

「あ。」

 リンが小さく声を漏らすから何事かと思って見て見ると、ズイっとケータイの画面を見せてきた。

「え、何?」
「ここ、ここ。」

 マスターに磨いてもらったらしいピカピカの爪が指し示した一文。

“天気予報:午後、ところにより雷雨。”

「・・・雷。」
「マスター、迎えに行ったほうが良いかも。」

 がく兄もカイ兄も出掛けてるみたいだし、これ、もしかしてチャンス?そう思ったから迷わず部屋を飛び出した。

「俺、行ってくる!!」

 後ろからリンの声が何か聞こえたような気がするけど、そんなの構わず階段を駆け下りた。靴を履くのももどかしいくらいだ。マスターの傘と、俺の傘、二本持って家を出る。その途端じっとり重たい空気がまとわり付いて、空を見上げたら真っ黒い雲で覆われていた。・・・いよいよヤバそうな雰囲気。

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