月夜アクアラング

□05弾
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―――……


【――…】


その人は、無表情だった。
何も考えていないように見えたけれど――…きっとそれは違う。
確かに見える、


私への、憎悪。


『……ッ………!!!』


…怖い、とてつもなく、怖い。
だってこの人は。
―――――この人は。



『っ…夢で見た、ひと……!』



外国人独特の金髪に、碧いブルーサファイアの瞳。
綺麗すぎるその容姿に、より一層恐ろしくなる。


【―――…

“夢で見た人”とは―…随分な言い用だな、愛吏】

『っ!…な、…なん、でっ…』


その人は、徐々に近寄ってくる。


【…なんで?ふん…決まっているだろう、愛吏。
貴様は俺の愛弟子だろうに】

『…?!』


徐々に、


【――いや、愛弟子とは他人行儀過ぎるな。
娘だ、娘。お前は俺の愛娘。そうだったろう、愛吏】

『し…知らない……そんなこと、私はっ…』


徐々に、


【知らない?
此処にきて知らないときたか。
随分だな。】

『ゃ…やめて………もう何も言わないで………っ!!!』


そして私に顔を近付けて、言う。


【俺は貴様に




 殺 さ れ た の に 。】


瞳に殺意を、

募らせて。



『ッい――――……



嫌ぁぁぁあああああああああああああああああああああっ!!!


聞きたくない。知りたくない。
そんな過去、私は知らない。

耳を塞いで、いっぱいいっぱいになって絶叫した。


【逃げるのか】

『いや、やだ、いやだやめて言わないで…っ!』

【いいや何度でも言ってやるぞ?俺はお前に、「愛吏!」】


誰かが遮った、その言葉の続き

次は何を言われるのだろうか。
そんな恐怖のまま、そちらを向いた




「愛吏………愛吏。大丈夫だよ、僕が、居てあげるから。だから君は恐がらなくていい。」


何の根拠も無いはずなのに、それでも力強く言われたその言葉と、その綺麗な瞳に射竦められて、私は一瞬、恐怖を忘れる。

視線をそのすぐ横にずらせば、そこにも、憎悪も殺意も何も、ただ私を見守る目をした方達がいて、




「――――愛吏、

俺達はまだ、愛吏が抱えてるものとか、愛吏が負ってきた痛みとかは、……まだわからない。
…わからないけど、俺達にだって言える事は、ちゃんとあるよ。



―――――愛吏は何も、
     悪くない。

愛吏は何も悪いことなんてしてない。もし過去に何かがあったとしても、俺達はそんなことで愛吏を見捨てたり、置いていったりしない!」


【…戯れ言を。】

『!』

【どうしてそんな事が言えると思う?…嘘だからだ。
貴様の力を利用する為に引き止めようとしているだけだ。】

『ぁ………ち…ちが…っ』

【ならば何故だと思う】

『…な…なんで……っ』





「…だって俺達、

――――仲間でしょ?

仲間なら、―…仲間だから。
俺達は愛吏をいつでも信じてるし、いつでも、何があっても…――護ってみせる。」



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