確かに恋だった

□追
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晒布を胸に当て、締める
最近またきつくなってきただろうか
毎朝嫌な程思い知らされる、自分が女であるという証。

支度を終え、食堂に向かうと今週の食事当番である山崎さんが声を掛けてくれた

「おはよう、結城ちゃん」
「…おはようございます」
「今日も早いね、たまには朝寝坊しても罰は当たらないと思うよ?」
「いえ…鍛錬がありますので。」
「うーん、まあそう言うと思ってた。
だからこれ、頑張る結城ちゃんにご褒美。」
「…いいんですか?」
「他の人には、内緒だよ」
「…ありがとうございます、いただきます。」

まだ誰もいない食堂で、いつもの席に座り手を合わせる
ご褒美、と言われるほどの事はしていないけれど。山崎さんがくれた内緒の抹茶アイスは、溶けてしまう前に口に運んだ

「(結城ちゃん喜んでくれてよかったぁ)」

こういった時、自分が観察が得意な事に感謝する
通常、無表情と無口の塊のような彼女の微々たる変化に気づけるのだから。

毎朝必ず誰よりも早く起きて早々に朝食を済ませ、他の隊士の倍以上の鍛錬をする彼女。
朝寝坊なんか、提案したところで
そうですね。なんて頷くわけもない
頑張り屋で真面目で、少し話下手な彼女を観察するのはとても楽しい

自分が真選組唯一の女隊士であることに若干の引け目があるのだろう、ただえさえ、負けず嫌いな性格だから。
剣術、体術、腕力、体力。どうしたって抗えない男女の差を、赦さない志。

「かっこいいなー」

男の自分が言うなんて、なんて情けないのかと思うが。


「おい山崎、何してんだよそろそろ皆来るぞ!」
「ああ、ごめん!」

呼ばれて慌てて作業を再開する。
すると、食べ終えた結城ちゃんが全員にきちんと聞こえるように少し声を大きくして


「ごちそうさまでした。」
「おう!どーいたしまして!」
「今日も頑張れよー!」
「あんま無茶すんなよ結城!」
「いってらっしゃい、結城ちゃん。」
「はい。ではまた後程。」

軽く会釈して道場に向かう結城ちゃん。
その背中を見送りつつ、綺麗に片された食器を片付けた

負けてられないよなあ。


2.追いかける。


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