オレンジDays。

□02
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「――北斗くんは、どうしてマネージャーに?」
『えー…と、
…やっぱ男がマネって、変ですかね?』
「あ、ごめん!そうじゃないの。ちょっと、珍しくて」
『はは、ですよねー。…うん、まあ、
単純に、バスケが好きなだけですよ』
「選手は…駄目なの?」
『んー、まあ俺は、マネージャー、なんで。』



第2Q
それは無意識な偏見だ



『おーはよ、火神くん』

偶然にも隣の席だった火神くんに朝一番で挨拶すると、目を丸くした彼は俺の右手にあるいちごミルクを怪訝そうに見ながら返した


「…同じクラスだったのか」

『これからよろしく。
あと、この前はごめんね』

「いや…俺も前、見てなかったし…、なあ」

『うん?』

「黒子って本当にキセキの世代なんだよな?」

『そだよ』

「なんで…もっと強豪に行かなかったんだ?」

『…そうだなぁ…
ここを選んだのは、俺の我儘かな』

「ワガママ?」

『そう。俺がね、誠凛に行きたいって言った。テツヤは俺の我儘を聞いてくれただけだよ。』

「はあ?
ただマネージャーする為にか」

『それは無意識な偏見だ

それは…選手に有りがちな、思い違いだね。火神くん。
確かにチームの要は選手だよ。試合するのも、練習するのも選手。選手無くして、チームは成り得ない。
けどね火神くん。チームに指示する監督は?チームを管理する顧問は?チームを支える、マネージャーは?』

「…悪ィ」

『わかってくれてよかった。そういうことで。改めて、よろしくね。』

「…ああ。よろしくな」

差し出した右手を火神くんが受ける。ああ、ボールを手放したことのない手だ。
溢れそうになった感情を落ち着かせる為に、少し温くなったいちごミルクを飲み干した。


「七星くん」

「うおっ?!」

『あ、テツヤ』

「1時間目、移動ですよ。行きましょう」

『ん。火神くん、また後でね』

「お、おう……あ!

チッ…またわかんねーことが増えたじゃねーか!」



無言のテツヤに右手を引かれたまま、廊下を歩く
どうして彼が無言なのか、その理由はわかっている。
わかっているけれど、俺にはどうしようもできないから、彼に手を引かれることしかできない。


『テツヤ、』

ちゃんと優しい声音になっているだろうか。こういう時の彼は酷く繊細だ。俺の手を掴んでいる白い左手が、一層壊れやすく見える程に。
名前を呼ぶと、足を止めたテツヤはゆっくりと振り向いた

「嫌な気分に、させてしまいましたか…?」

『全然。ただ、後ろを歩くのはちょっと辛いかな』

「すみません…、
君が、火神くんと話しているのを見てしまって、つい…」

『駄目だよテツヤ。チームなんだから。』

「…そう、ですよね。気を付けます」


テツヤが、握り締めてた俺の手を離す
そうして俺の隣に並んで、テツヤはいつものように微笑んで言った



「僕から…離れないでくださいね、七星くん」


彼はとても、繊細だ。

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