郁貴の本棚

□彼岸の先に
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空を忘れた この機械の町で
歌を亡くした 人々は踊る
ちぐはぐで ふぞろいな
愉快で奇怪なダンスは続く

ああ どうか
その花が散る前に―――

紅蓮に染まる あの寂れた村は
風に揺られる 彼岸の花を抱く

黄昏の空に 警笛が鳴く
終わらない路線 続く列車
“私はここにいるよ”
届かない叫びは 溶けて消える

イバラの城よ 固き門を開け
殻に籠る純白が 紅く紅くなる前に

数ある世界に 等しく咲く花
たくさんの命を言葉を吸って
鮮やかな 艶やかな
紅蓮の炎は世界を包む

地平線の向こう側に一体何があるというのか―――。

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