二楽章

□君を守る方法
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「おーい、日野いるかー?」






ここは普通科、二年二組。日野香穂子の教室だ。
そこへ同じコンクールメンバーの土浦梁太郎が訪ねてきたのだ。






「はい、はーい!って土浦くん!どうしたの?」






「おう、悪いな。ちょっと英語の辞書を忘れちまって。持ってねーか?」






「あ、うん。あるよ〜ちょっと待ってて。」






そういうと香穂子は自分のロッカーから辞書を持って戻ってきた。





「はい、どうぞ。あ、5限目には返してね、うちも英語だから。」






「サンキュ!じゃあ昼には返すよ。じゃ、またあとでな。」





土浦は香穂子の頭をくしゃっと撫でると、自分の教室へ戻って行った。






そっか、土浦くんは…普通科だもんね…。
香穂子は土浦を見送りながら、同じ学園の違う場所にいる彼を想った。
どうしてるかな…月森くん…。






なんだか寂しい気持ちになったが、お昼には会えることを思い出し、
もうひと頑張りするか、と思い直す。






早く、会いたい。





「んー」






長かった授業も終わり、伸びをした。これから月森に会えると思うと気分も弾む。






「日野。」






呼ばれた方向に目をやると、月森が迎えに来ていた。今日は屋上で二人で過ごす予定だ。






最初こそクラス中が驚いたが、こうして月森が普通科に迎えに来るのは、もう珍しくなかった。





「ごめんね、おまたせ。」






「いや、君に早く会いたかったんだ。」






月森は香穂子を見つめながら耳元で囁いた。
付き合いだしてちょうど一ヶ月が経つ。
香穂子は照れながら月森を見ると、嬉しそうに微笑んだ。






それから二人は屋上へ向かった。昼休みの屋上はほとんど人が来ない。
そのまま練習も兼ねて過ごせるため、お気に入りの場所となっていた。






「今日はおにぎりにしてみたの。」






二人仲良くベンチに座り、弁当を広げた。
色とりどりのおかずが並んでいる。






「ああ、いただく。」






最近では月森の弁当も香穂子が持ってきていた。
どうせ作るから二人分でも同じという理由で。






「ね、おいしい?月森くん。」






「ああ、君の作る弁当は本当においしい。いつもありがとう。」






「良かった。いつも月森くんにヴァイオリン教えてもらってばかりだから、
あたしも月森くんのために役に立てて嬉しい。」





月森の食べる様子を眺めながら、香穂子は嬉しそうにしている。






「俺は君に教えることは苦じゃない。むしろ、嬉しい。君が俺を頼ってくれて。」






「そうかな?でも憧れの月森くんが教えてくれるなんてあたしにはもったいないよ。」







「わかってないな君は。」







少し月森は少し不機嫌そうに言う。






「あれ?月森くん…怒った?」
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