サヴァイブ

□真夜中の幸せ
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「あ〜〜〜っ!」

ルナの悲痛な叫びが部屋中に木霊した。


***真夜中の幸せ***



時は深夜。
場所はルナの自室。

明日はシャアラ達と一緒に登校する約束をした為、早起きしなきゃな〜と思いながら、ルナはベッドに入ろうとベッドに近づいた。


ふとサイドテーブルに
置いてある、大切な仲間達の写真に目が止まった。

「幸せだな〜私。こんなに仲間がいて。」
一人一人の顔を見ながら、ルナは仲間がいるありがたみに幸せを改めて噛み締めていた。
そしてその中に写る黒髪の少年を見てルナは重大なことを思い出し、冒頭の叫びに至ったのだ。


「・・・なにをそんなに騒いどんねん。ご近所さんに迷惑やろうが」

不機嫌さを露にし、睡眠状態に入っていたチャコがベッドから半身を起こしてた。
本人はまだまだ眠い様子で寝惚け眼を擦っている。


「だって〜」

「だって〜。やあらへんがな。うちは長年飲みたかったジュースがやっと手に入ったとこやったのに・・・」

半分泣きながら抗議するルナに、眠りから覚醒し始めたらしいチャコは、先程の甘い夢を思い出していた。

*****

まっさらな白い砂浜
突き抜ける様な青い空
海から吹き付ける暖かい風エメラルドグリーンの美しい海・・・

その砂浜にポツンと置かれたビーチチェアにチャコは座っていた。
頭の上にはビタミンカラーで構成されたカラフルなパラソル。
両脇には南国の衣装を来た人が椰子の葉から柔らかい風を送っている。
チャコはそんな楽園の様な場所で夢心地気分でゆったりと寛いでいた。

そんな時目の前に出されたのは長年味を賞味することを夢見てきた「超高級☆南国トロピカルジュース」

その存在に目を見開き、弾けんばかりの笑顔で受け取ったチャコは、ストローを口に付けようとした。
そして・・・

*****


ルナの叫び声で現実に無理矢理引き戻されたのだ。

チャコが項垂れてしまうのも無理はない


「はぁ〜・・・。んで?なにをそんなに騒いどったんや?」

ため息を一つついたことでチャコは悲しい気持ちを共に吐き出した様だ。その切り替えの早さがチャコのいいところである。

一方で未だにショック状態のルナはその言葉で少し正気になった。


「・・・0時過ぎちゃったの。」

「は?」

「だから0時過ぎちゃったんだって〜!!!」


半ば投げやりでルナが叫んだ。
ルナの要領の得ない言葉にチャコは何が言いたいのか分からずぽかーんとするしかなかった。
しかしうわ〜ん、どうしようといつまでも騒ぐルナに覚醒したチャコは静止を掛けた。

「ちょっと待つんや!」

「いたっ!」

痛みという制裁を持って。
ルナの脳天にジャストミートしたらしいチャコの渾身の一撃はルナを黙らせるには十分だった。

「んで?どうしたんや?」

本日2度目のチャコの質問にルナは痛む頭を押さえて答えた。

「ちょっとは手加減してよ〜。・・・実はね、今日カオルの誕生日だったのよ。
誕生日になった瞬間、メッセージ送ろうと思ってたからショックで・・・」

「あ〜」


そしてチャコは納得した。ルナがなぜあんなにショックを受けていたかを。
そしてルナがこの日のためにどんなに頑張ったか知っていた。
普段ほとんど使わないメールの装飾方法をシャアラ達に習ったり、どんなプレゼントが良いかシンゴ達から調査していたのだ。

その上昨日まで誕生日メールの、文字の色・大きさ・配置まで吟味に吟味を重ねていたのである。

しかし今日は3日間続いたテスト最終日。それまでに溜まった疲労と睡眠不足、そしてテストが終わった安堵感によってすっかり忘れてしまっていたのだ。

悔やむのも無理はない。


「今からでも送ればええやろ?まだあんまり時間過ぎてないで!」

ルナのあまりの落ち込み様にチャコは励まそうと必死になった。
その気遣いに感謝しながらもルナは首を横に振った。
「・・・出来たら一番にお祝いしたかったんだ。そしたら15才になったカオルが一番最初に考えるのが私だのことだったから・・・。」

時間は00時48分。
カオルの誕生日になってから、既に48分の時間が経過していた。
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